年齢は関係ない?記憶力を高める脳科学の習慣

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「最近、人の名前が出てこない」「スマホをどこに置いたか忘れてしまう」と悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。しかし、脳科学の研究を紐解くと、年齢による記憶力の低下だけではないことがわかります。物忘れの正体を知り、適切な習慣を取り入れることで、記憶力の低下をゆるやかにできる可能性があります。本記事では、今日から実践できる記憶力向上の秘訣を詳しく解説します。

「年だから」は思い込み!記憶力が落ちる心理的要因と真実

多くの方が「年をとれば記憶力が落ちるのは当たり前」と考えがちですが、研究では、その捉え方自体が成績や誤りに影響する場合が示されています。タフツ大学の研究では、18〜22歳の若者と60〜74歳の年配者を対象に、単語リストを学習した後、見た単語かどうかを判断する課題が行われました。

この課題では、学習した単語と意味的に関連する「出ていない単語」も混ぜて提示し、誤って「見た」と答える割合も調べています。学習後に「年をとると記憶は低下する」といった説明を読み、これから記憶力低下が起きやすいと意識させられた年配者は、関連語を「見た」と答える誤認が増えました。一方で「これは言語能力の評価で、年配者は有利になりやすい」と伝えられた条件では、年配者の誤認が減り、若者との差が縮んだと報告されています。

つまり、結果は「年齢だけが原因で一律に成績が決まる」という単純な話ではなく、課題の受け止め方や不安が偽記憶の起こりやすさに関わる可能性を示しています。加齢による変化があるとしても、すべてをステレオタイプ脅威のような心理的な圧力だけで説明できるわけではないため、事実として確認できる範囲を押さえて理解することが大切です。

  • 「年配者は記憶が弱い」と強調されると、年配者の誤認が増える傾向が報告されています。
  • 「言語能力の評価」として提示すると、年配者の誤認が減り、若者との差が縮むとされています。
  • 日常の物忘れを一律に年齢のせいだと決めつけず、状況や受け止め方も点検する姿勢が大切です。

~アメリカ・タフツ大学の研究では、18〜22歳の若者と60〜74歳の年配者に、単語記憶のテストを行いました。
「これは普通の心理実験です」と伝えた場合、両者の正答率はほぼ同じでした。
しかし、「これは記憶力テストです。通常、年配の方の成績が下がります」と伝えたところ、年配者の正答率だけが約30%も下がってしまったのです(*1)。
つまり、「歳をとると物覚えが悪くなる」というのは、脳の問題ではなく“思い込み”による影響が大きいことを意味しています。
実際に落ちているのは、記憶力よりも「集中力」や「覚えようとする意欲」だったのです。~

GOETHE

わずか0.4秒の魔法!視覚情報を記憶に定着させるコツ

物忘れを防ぐ方法の一つが、効果的で簡単な「0.4秒ルール」です。私たちは日々大量の情報に触れていますが、そのほとんどを素通りさせています。

脳が情報を「長期記憶」として保存するためには、最低でも0.3秒から0.4秒以上の注視が必要であることが研究で示唆されています。

例えば、鍵を置くときや、駐車場で停めた車の場所を忘れにくくする方法として、意識的に0.4秒しっかり見るだけで、場所を覚えやすくなると考えられます。

大人の「慣れ」が物忘れを引き起こす

子供の頃に物覚えが良いのは、見るものすべてが新鮮で、無意識にじっくり観察しているからでしょう。対して大人は経験からこれは見慣れた対象だと一瞬で判断して視線を外している可能性があります。脳の集中力のピークは平均して43歳前後だと言われています。

とくに40代から50代にかけては、脳が物事に慣れやすくなる一方で、仕事では部下の管理や判断業務、家庭では子どもの進学や将来への対応など、日常的に処理すべき情報量が若い頃よりも大きく増えていきます。

その結果、無意識のうちに注意力が分散し、見ているつもりでも情報を十分に捉えきれていない状態が生まれやすくなります。

だからこそこの年代では、ただ流し見るのではなく、意識的に「見る」「向き合う」時間を確保することが、記憶を確実に定着させるための重要なポイントになるのです。

場所を変えるだけで記憶力が50%向上する理由

もう一つ、物忘れを防ぐ方法として注目されているのが「場所を変えること」です。アメリカ・ミシガン大学の研究では、単語暗記を「同じ部屋で行ったグループ」と「途中で場所を変えたグループ」で比較する実験が行われました。

その結果、途中で場所を変えたグループのほうが、覚えていた単語の数が約50%も多かったことが明らかになっています。この差を生み出しているのが、脳に存在する「場所細胞」です。

場所細胞は空間を移動することで、記憶を司る海馬の歯状回を刺激します。そのため、情報の定着を強く後押しする働きを持っています。

仕事や勉強で行き詰まったときに、カフェへ移動したり、外に出て人と話したりすると気分が切り替わるのは、場所が変わることで脳が実際に活性化しているからなのです。

マンネリ化した生活が脳を老化させる

幸福度が高く、海馬が発達している人ほど、1日の移動範囲が広いこともわかっています。また、新しい刺激を好む人は、加齢による知的機能の低下が起こりにくい傾向があります。

毎日同じ人と話し、同じ店で同じメニューを選び、同じ道を歩く。こうした変化の少ないルーチンが続くと、脳は「省エネモード」に入り、記憶への刺激が不足しがちになります。

散歩のコースを変える、入ったことのない店に立ち寄るなど、ほんの小さな行動の変化が、海馬を刺激し、脳を若々しく保つ大きなきっかけになるのです。

習慣の種類 脳への影響 具体的なアクション
環境の変化 場所細胞の活性化 作業場所をリビングからカフェに変える
移動の促進 海馬の歯状回を刺激 週に一度は初めての場所へ散歩に行く
視覚の活用 長期記憶への定着 覚えたい対象を0.4秒以上じっと見る

脳を刺激する運動!生活習慣で作る「忘れない脳」

記憶力を維持するためには、脳そのものの健康を保つ生活習慣が欠かせません。運動を行うと筋肉からアイリシンと呼ばれる物質が分泌されることが報告されています。

アイリシンはエネルギー代謝に関わる可能性が示されており、動物研究などでは運動による脳内のBDNF(脳由来神経栄養因子)の増加と関連づけて語られることがあります。

BDNFは記憶に関わる海馬などで神経のつながりを保つ役割を担うとされ、学習や心身のコンディションとも関係が深い分子です。

ただし、運動による脳の変化は一つの経路だけで説明できず、アイリシンやBDNFを含む複数の仕組みが関わると考えられています。

有酸素運動が海馬の容積を増やす

ウォーキングなどの有酸素運動は全身の血流を促し、気分の落ち込みや不安感の軽減に役立つ可能性があります。さらに高齢者を対象にした研究では、有酸素運動を継続した群で海馬体積の増加が報告されています。

加齢に伴い海馬が小さくなる傾向があるため、無理のない有酸素運動を習慣にして、記憶を支える脳の状態を整えていきます。

脳を育てる栄養素を積極的に取り入れる

食事面では神経の働きを支える脂肪酸も重要です。青魚に含まれるDHA・EPAは、記憶に関する指標の改善が報告されていますが、効果には個人差があるため、食事全体のバランスと合わせて取り入れます。

また、軽い脱水でも注意力や短期記憶が低下する報告があるため、こまめな水分補給を心がけると安心です。

まとめ

記憶力の低下は、心理的な思い込みや生活のマンネリ化が大きく関係しています。自信を持ち、対象を0.4秒間じっくり見つめ、積極的に場所を移動して脳に新しい刺激を与えることが大切です。

これらの科学的ノウハウを日常に取り入れれば、脳は何歳からでも活性化します。まずは今日、いつもと違う道を歩くことから始めてみましょう。脳の若返りは、あなたの小さな一歩から始まります。

あとがき

ここまで、「年齢=記憶力低下」という思い込みが、実は脳の働きを縛っている可能性があること、そして少しの意識や行動の変化で、記憶力は十分に保ち、伸ばせることをお伝えしてきました。

大切なのは特別なトレーニングや難しい知識ではありません。0.4秒しっかり見ること、場所を変えて移動すること、体を動かして脳に栄養を届けることです。どれも日常の延長線上にある、無理のない習慣ばかりです。

この記事が、記憶力に対する不安を手放し、「まだまだ大丈夫」「これからでも変えられる」と思えるきっかけになれば幸いです。脳を信じ、日常に小さな変化を取り入れながら、自分らしいペースで忘れにくい毎日を育てていきましょう。

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