A型事業所で「次にどんな仕事を取り入れよう?」と悩んだとき、最初の一歩として有効なのが「ブレインストーミング」です。複数の意見を持ち寄って新しいアイデアを生み出すこの方法は、利用者の可能性を広げるためにも、チームの連携を強めるためにもぴったりのアプローチです。
第1章:今、なぜ新しい業務の検討が必要なのか?
A型事業所を取り巻く環境は今、大きく変わりつつあります。利用者に合った新しい業務を考えることは、日々の支援の質を高めることにもつながります。この章では、新たな業務を検討すべき背景とその意義についてお伝えします。
環境の変化に応じた業務見直しの必要性
A型就労支援事業所の運営において、「今ある仕事だけで本当に大丈夫?」と感じる場面が増えてきていませんか?時代の流れとともに、制度や人材、地域社会のニーズが変化しており、これまで通りの業務だけでは対応しきれない状況も出てきています。
制度・人材・地域ニーズの変化
近年は、国の制度改正により「売上」や「地域連携」を重視する方針が強まっています。これに加えて、利用者の特性が多様化しているため、ひとり一人に合った仕事の設計がますます求められるようになりました。
さらに、地域社会からの期待も「福祉」だけにとどまらず、まちづくりや企業との連携といった広がりを見せています。
利用者の力を引き出す“新しい業務”
こうした背景から「利用者の可能性をもっと引き出せるような新しい仕事」を検討することが重要になっています。
仕事の内容が広がれば「やってみたい」「できた!」という達成感にもつながり、結果的に定着率の向上やマンネリ化の防止にもつながります。
「どう始める?」の悩みに応える手法
とはいえ、いきなり新しい業務を考えるのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。そんなときに役立つのが「ブレインストーミング」です。次章では、この発想法について、基本的な考え方からご紹介していきます。
第2章:ブレインストーミングってどんな方法?

新しい業務を考えるとき、「正解」をすぐに出そうとする必要はありません。まずは自由にアイデアを出し合うことが大切です。
この章では、その第一歩となる「ブレインストーミング」という発想法について、基本からわかりやすくご紹介します。
誰でも参加できるアイデア発想の方法
「新しい業務を考える」と言っても、いきなり正解を出すのは難しいものです。そこで活用したいのが、自由な発想を引き出すための会議形式「ブレインストーミング(ブレスト)」です。
ブレインストーミングの基本と特徴
ブレインストーミングとは、複数人で自由に意見を出し合い、アイデアの幅を広げるための手法です。参加者が「正解」を出すことを目的とするのではなく、「思いついたことをどんどん出す」というのが最大のポイントです。
この方法の基本ルールには、「批判しない」「とにかくたくさん出す」「自由な発想を歓迎」「他人の意見に便乗してOK」などがあります。
これらのルールにより、会議の場が安心して発言できる空間になり、普段は出てこないような斬新なアイデアが生まれやすくなります。
A型事業所でも活かせる理由とは
ビジネスの世界ではよく知られた手法ですが、実はA型事業所でも活用しやすい方法です。というのも、事業所には職員だけでなく、利用者や関係者など、多様な立場の人が集まっています。
異なる視点や経験があるからこそ、思わぬひらめきや新しい発想が飛び出す可能性があるのです。
次の章では、ブレストをA型事業所で取り入れた場合にどんなメリットがあるのか、より具体的にご紹介していきます。
第3章:A型事業所で活かせる!ブレストのメリットとは
ブレインストーミングには、ただアイデアを出す以上の効果があります。この章では、A型事業所でブレストを実施することで得られる具体的なメリットを、職員・利用者の両方の視点からお伝えします。
チームで考えることが、発想の幅を広げる
「ひとりで考えてもアイデアが浮かばない」と感じた経験はありませんか?ブレインストーミングは、そうした行き詰まりを打破し、チームでアイデアの幅を広げるのに最適な方法です。
利用者の視点や現場感覚を活かせる
ブレストを行うことで、普段の業務ではなかなか聞けない現場の声や、利用者のちょっとした気づきがアイデアとして活かされることがあります。
「それなら○○さんに合いそう」「以前やった作業と組み合わせられるかも」といった視点は、日常の中からしか生まれません。
業務設計や役割分担のヒントにも
ブレストで出たアイデアは、「そのまま実行」ではなく、整理しながら業務設計に生かすことができます。「この作業は短時間で終わりそう」「ここは補助が必要かも」といった見立てができれば、実際の導入もしやすくなります。
チームの一体感が生まれ、広報効果も期待
さらに、全員で一緒に考える時間を持つことで、チームの一体感や参加意識も高まります。
「自分のアイデアが業務になった」という体験は利用者や職員のモチベーション向上にもつながりますし、発信力のある広報活動にも結びつきやすくなります。
第4章:気をつけたい!ブレストの注意点とデメリット

ブレインストーミングは自由な発想を引き出せる一方で、やり方を誤ると逆効果になることもあります。ここでは、ブレストを行う際に注意したい点やありがちな落とし穴について解説します。
声の大きな人の意見に偏るリスク
ブレストの場では、積極的な人の意見が無意識に大きな影響を与えてしまうことがあります。結果として、他の参加者が遠慮して発言できず、偏った内容になってしまう恐れがあります。
具体性に欠けるアイデアが量産されることも
アイデアをたくさん出すことは大切ですが、内容が抽象的すぎると、実際の業務にはつながりません。具体性を伴わないアイデアの乱発は、検討の土台にもなりにくいのが現実です。
批判禁止が「深掘りできない」原因になる場合も
批判を避けることで発言しやすくなりますが、一方で意見の検証や改善の機会が失われることもあります。意見を育てる視点を忘れないことが重要です。
結論が出ないままダラダラしがちになる
時間管理が不十分だと、ブレストがただの雑談のようになってしまうケースもあります。あらかじめ時間の目安を設け、適度に区切ることで生産性が上がります。
「進行役」「記録係」などの役割設定が有効
効果的なブレストには、全体を見渡す進行役やアイデアを記録する係の存在が不可欠です。役割を明確にすることで、会議がスムーズに進みやすくなります。
第5章:職員会議で実践するブレストの進め方
実際の現場でブレストを導入するには、ちょっとした工夫と準備が必要です。ここでは、職員会議で無理なく実践できるブレストのステップをご紹介します。
目的とテーマを明確にする
「なんのために集まるのか」を明確にすることがブレストの出発点です。「軽作業の新業務を探したい」など、具体的なテーマ設定が成功の鍵となります。
参加者の選定と視点の多様性
職員だけでなく、可能であれば利用者の声もヒントにすると、良いアイディアが出やすくなるでしょう。現場をよく知る視点が加わることで、実現性のあるアイデアが生まれやすくなります。
時間は30〜60分を目安にタイムボックス化
ブレストは長くやれば良いというものではありません。集中して意見を出し合うために、30〜60分を目安に時間を区切るのが効果的です。
進行役が果たす重要な役割
話が偏らないようにしたり、テーマから脱線しないよう調整したりする進行役は、ブレスト成功の立役者です。公平な意見交換を促す存在です。
ホワイトボードや付箋などのツールを活用
視覚的に整理しながら進めることで、参加者全員の理解が深まりやすくなります。マインドマップやホワイトボードをうまく使いましょう。
第6章:AIと組み合わせたブレストの新しいカタチ
近年では、ブレインストーミングにAIを取り入れる手法も広がりつつあります。ここでは、AIを活用したブレストの可能性と注意点についてご紹介します。
生成AIがもたらす新しい発想
ChatGPTのようなAIは、人間では思いつかない切り口のアイデアを提案することがあります。発想の起点として非常に有効です。
AIを“たたき台”として活用する
職員会議の前にAIで仮のアイデアを出しておくと、話し合いが進めやすくなります。「作業所×地元企業」といったキーワードで幅広い案が得られます。
実現性のチェックは人の手で
AIのアイデアは現場のリアルな状況を加味していません。アイデアをうのみにせず、実際に実行できるかどうかを慎重に検討しましょう。
人とAIのブレストで質と量の両立へ
人の経験とAIの発想を組み合わせれば、より多角的で豊かなアイデアが生まれます。次世代の業務開発手法として、試す価値は十分にあります。
まとめ

ブレインストーミングは、A型事業所で新しい業務を考えるうえで非常に有効な手法です。注意点を押さえ、目的や進め方を工夫すれば誰でも実践できます。さらにAIの力も取り入れることで、アイデアの幅が大きく広がります。
利用者の未来の可能性を広げるために、職員同士の意見交換の場として、ぜひ取り入れてみてください。
あとがき
アイディアを大量に出すという方法としては、ブレインストーミングは有効といえるでしょう。しかし、出たアイディアを実際に活用できる形にするには、アイディアの内容について検討していく手法も必要になってきます。
本記事では、アイディアを量的に多く作り出す方法をメインとしましたが、次回は上がってきたアイディアをどのようにまとめていくか、という方向性のロジカルシンキングについてもご紹介できればと思っています。


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