日本の企業には、一定の割合で障害者を雇用する義務があります。この「法定雇用率」が2024年から段階的に引き上げられ、2026年にはさらに大きな節目を迎えることをご存じでしょうか。制度が変わることで、企業だけでなく働く側にもさまざまな変化が訪れると予想されています。変更の背景や具体的な数字を正しく理解し、早めに備えておくことが大切です。本記事では、障害者雇用の基本から2026年の変更点、そして私たちの生活にどのような影響があるのかを詳しく丁寧に紐解いていきます。
障害者の法定雇用率とは?制度の基本を優しく解説
障害者雇用率制度とは、障害のある方が能力を発揮し、適性に応じて働ける社会を目指し、一定規模以上の事業主に対して法定雇用率以上の障害者雇用を求める制度です。
障害があることを理由に働く機会が狭まらないよう、国は法律に基づいて制度のルールを定めています。
障害者雇用促進法の役割
この制度の根拠となる法律は、正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」(いわゆる障害者雇用促進法)です。
この法律により、一定数以上の常用労働者を雇用する事業主は、常用労働者に占める障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者)の割合を法定雇用率以上にする義務があります。
民間企業だけでなく、国や地方公共団体などの公的機関にも雇用率が定められています。
基準に届かない場合、ハローワークによる行政指導が行われます。また、常用労働者数が100人を超える事業主で法定雇用率が未達成の場合は、障害者雇用納付金を納付する仕組みがあります。
逆に、基準を上回って雇用している事業主には、障害者雇用調整金や報奨金などが支給される仕組みがあります。
制度上の算定対象となる「障害者」は、原則として身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所持者が該当します。
なお、精神障害者については2018年4月から障害者雇用義務の対象に加わり、法定雇用率制度においても算定対象として扱われています。
~常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者法定雇用率を未達成の場合は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人当たり月額50,000円の障害者雇用納付金を納付していただきます。~
2026年から何が変わる?段階的な引き上げのスケジュール

2026年に向けて、障害者雇用のルールは転換期を迎えています。注目点は、民間企業の法定雇用率が段階的に引き上げられることです。これは、障害のある方が働ける場を広げることを目的とした制度改正です。
2段階の引き上げ計画
政府は、事業主が計画的に対応できるよう、法定雇用率を段階的に引き上げる方針を示しています。第1段階は2024年4月に実施され、民間企業の法定雇用率は2.3%から2.5%へ引き上げられました。
そして第2段階として、2026年7月には民間企業の法定雇用率が2.7%へ引き上げられることが決まっています。2.5%から2.7%への変更は0.2ポイントですが、従業員数が多い企業ほど必要となる雇用人数に影響が出ます。
- 民間企業の法定雇用率は、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%です。
- 国や地方公共団体などの公的機関も段階的に引き上げられ、2026年7月1日から国・地方公共団体等は3.0%、都道府県等の教育委員会は2.9%となります。
- スケジュールを把握しておくことで、採用計画や社内体制の整備を進めやすくなります。
特定短時間労働者の算定対象拡大
従来、雇用率の算定で「短時間労働者」として扱われるのは週所定労働時間が20時間以上30時間未満の方が中心でしたが、2024年4月からは週所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」も、条件を満たす場合に算定対象に含まれるようになりました。
具体的には、週10時間以上20時間未満で働く精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者について、雇用率上0.5人として算定できます。これにより、長時間の就労が難しい方でも、働き方の選択肢が広がります。
対象となる企業の範囲が拡大!従業員数の基準に注意
法定雇用率の引き上げと同時に、重要な変更点があります。それは、障害者を雇用する義務が発生する事業主の範囲が広がる点です。これにより、これまで対象外だった中小企業でも制度対応が必要になります。
37.5人以上の壁とは
対象となる事業主の範囲は段階的に見直されています。2023年度までは43.5人以上、2024年4月からは40.0人以上、そして2026年7月からは37.5人以上へと拡大されます。
ここでいう「従業員数」は、制度上は常用雇用労働者や短時間労働者の区分など、一定のルールに基づいて算定されます。
つまり、これまで「小規模だから障害者雇用は関係ない」と考えていた職場でも、法律上の雇用義務や報告義務の対象となる可能性があります。
- 従業員数の算定では、正社員だけでなく、一定の条件を満たす有期雇用者やパートタイム労働者も対象に含まれます。制度上は週所定労働時間などにより区分されます。
- 対象事業主は、毎年6月1日現在の障害者雇用状況を、ハローワークへ報告する義務があります。
- 対象範囲の拡大により、採用計画や職務の切り出し、受け入れ体制づくりなどを早めに検討する必要があります。
- 37.5人という基準は業種を問わず適用されるため、事務職に限らず飲食業や小売業なども含めて幅広い事業主に関係します。
私たちが準備できること!新しい働き方とサポート体制

制度が変わる中で、障害のある方やそのご家族、支援者の方は、どのような準備をすべきでしょうか。まず知っておきたいのは、短時間勤務やテレワークなど、働き方の選択肢が広がりつつある点です。
柔軟な働き方の普及
最近は、週に数日、1日数時間といった短時間勤務を活用するケースも見られます。体力や体調、通院などの事情に合わせて、無理のないスタートを切れるように調整する考え方が広がっています。
また、通勤が難しい方にとっては、テレワークでの雇用も選択肢になります。厚生労働省の取り組みとして、障害者のテレワーク雇用の導入事例の発信も行われており、企業側・働く側の双方にメリットがある形として紹介されています。
- まずは就労移行支援などの就労系障害福祉サービスや、関係機関に相談し、得意不得意や希望条件を整理してみましょう。
- ハローワークには障害者の就職を支援する専門窓口があり、仕事に関する情報提供や相談対応などの支援が案内されています。
- 職場適応を支えるジョブコーチ支援は、公的なジョブコーチ支援(地域障害者職業センター等)では費用がかからない旨が案内されています。
- 企業が提供する合理的配慮について、必要な配慮を整理し、希望を伝える準備をしておくことも大切です。
まとめ

2026年7月から民間企業の法定雇用率は2.7%に上がり、対象も常用雇用労働者37.5人以上へ拡大します。2024年4月の2.5%への引き上げに続く変更で、特定短時間労働者の算定も広がりました。
公的機関も率が引き上げられ、報告や合理的配慮など日常の運用も重要になります。企業は採用計画や受け入れ体制を整え、働く側は短時間勤務やテレワーク、支援機関を活用して自分に合う働き方を探し、早めに備えましょう。
あとがき
近年、障がい者雇用の枠組みは急速に広がりを見せています。私が執筆を通じて感じるのは、社会が多様性を認める方向へ大きく舵を切っているというポジティブな変化です。
しかし、理想の影で現場の企業が大変な対応に追われているのもまた事実です。企業と働く人の双方が納得できる持続可能な仕組みを模索することが、現在最も求められているのかもしれません。
この記事が、変化の激しい時代の中で、誰もが自分らしく働ける社会を作るための一助となれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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