うつ病はペットで改善するのか?癒し効果と脳内物質の関係性

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気分が落ち込んだり、原因不明の体調不良が続くと、心が疲弊してしまいますよね。そんな時、動物の温もりや無条件の愛情に触れると、心がふっと軽くなるのを感じる方もいるのではないでしょうか。本記事では、ペットと触れ合うことで得られる脳内物質の変化や、心の健康にもたらされる具体的な影響についてご紹介します。

脳科学で解明!ペットとの触れ合いが心の健康に良い理由

動物と触れ合うと理由もなく心が安らいだり幸せな気持ちになったりする経験はありませんか。この現象は単なる感情的なものではなく、オキシトシンやコルチゾールなどのホルモン指標の変化が報告されています。

特にうつ病で孤独感や不安を強く感じている方にとって、ペットとの触れ合いは大きな心の支えになる可能性があります。

動物を撫でたりアイコンタクトを取ったりするだけでも脳内では幸福感や愛着に関わるホルモンが分泌されることが研究で示唆されています。

この中で特に注目されているのがオキシトシンというホルモンです。オキシトシンは一般に愛情ホルモンや愛着ホルモンとも呼ばれ、信頼感や安心感を強める働きがあると言われています。

人間同士の触れ合いで分泌されることが知られていますがペット、特に犬や猫と触れ合うことでも同様に分泌が促進されることが分かってきました。オキシトシンには抗ストレス作用もあり、不安を和らげ気分を安定させる効果が期待されています。

  • ペットとの触れ合いは幸福ホルモン(オキシトシン)の分泌を促す可能性がある
  • オキシトシンには抗ストレス作用や安心感を高める効果が期待されている
  • うつ病などで感じやすい孤独感や不安を和らげる可能性が示唆されている

またストレスホルモンとして知られるコルチゾールのレベルがペットとの交流によって低下するという研究結果もあります。コルチゾールの過剰な分泌は心身の疲弊につながるため、そのレベルが下がることはリラックス効果が高まっている証拠とも考えられます。

このように、ペットとの非言語的で無条件の愛情に満ちた交流は私たちの脳と心に対して、非常にポジティブな影響を与えていると言えるでしょう。ただし、これはうつ病そのものを治療する代わりになるものではないという点は理解しておく必要があります。

~動物が人にもたらす効果は、3つに分類され、身体的、心理的、社会的に効果があるといわれています。
身体的:オキシトシンの分泌、心拍数の安定、リラックス効果 など
心理的:孤独感の軽減、幸福感の向上、気分の安定 など
社会的:人と人との繋がり、人と人との関係性を円滑にする など
があります。
最近では、これまで定番だった犬、猫、鳥、魚類に加え、ハムスター、ウサギ、ハリネズミ、フクロモモンガ、は虫類、などと飼う人の生活環境に合わせて多様化してきました。~

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規則正しい生活へ導く!ペットがくれる毎日のルーティン

うつ病の症状の一つに無気力や活動性の低下があります。朝起きるのがつらい、何もやる気が起きないなど、日常生活のリズムが乱れがちになることがあります。そのような状況で、ペットの存在が生活に規律と目的意識をもたらしてくれる可能性があります。

ペットは生きていくために私たち人間からのお世話を必要とします。犬であれば散歩、猫や小動物であっても餌やりやトイレの掃除、健康管理など毎日決まった時間に行うべきルーティンが存在します。

これらのお世話は、飼い主にとって強制力のある活動となり否応なしにベッドから起き上がり、外に出て体を動かすきっかけを与えてくれます。特に散歩は日光を浴びる機会を提供し、セロトニンなどの神経伝達物質の分泌を促す上でも重要であると言えるでしょう。

  • ペットのお世話は規則正しい生活リズムを作るきっかけとなる
  • 散歩や餌やりといったルーティンが活動性を高める可能性がある
  • 無気力や不眠など、うつ病の症状の改善に間接的に寄与する可能性があります。

また、ペットの飼い主として責任を果たすという行為は自己肯定感の向上にもつながるかもしれません。「この子のために頑張らなければ」という使命感はうつ病で自信を失いかけている人にとって生きるための張り合いとなることがあります。

誰かに必要とされているという感覚は、孤独感を打ち破り心の活力を取り戻す助けになるでしょう。しかし、体調が優れない時に無理をしてお世話を続けることは大きな負担となるため、自分の体調とペットのニーズのバランスを取ることが非常に大切です。

専門的な癒しの力!アニマルセラピーの可能性

ペットがもたらす癒しの効果は医療や福祉の現場でも活用されており、これらはAAI(動物介在介入)と総称されることがあります。

AAIにはAAT(動物介在療法)AAE(動物介在教育)、そして状況によってAAA(動物介在活動)などがあり、うつ病を含むメンタル不調の領域で補助的に取り入れられることがあります。

AATは専門職(医療・教育・福祉など)が計画的かつ構造化して実施し、目標や進捗を評価し記録する治療的介入です。動物との触れ合いを通じて意欲の向上やコミュニケーション能力の回復を目指すことがあります。

一方AAAはレクリエーションやQOL向上を目的とした、比較的インフォーマルな訪問・交流で、安らぎや楽しみの提供につながることがあります。

AAEは教育目標(学習・認知・向社会的スキルなど)に焦点を当て、教育職が計画的に行うものです。

  • アニマルセラピー(AAI)は治療(AAT)・教育(AAE)・交流活動(AAA)などに分かれ、目的に応じて用いられます。
  • AAT(動物介在療法)は身体・認知・行動・社会情動面の機能を高めることを目的に、個別の目標を設定して行われます。
  • AAA(動物介在活動)は安らぎや楽しみなどを通じてQOL向上をねらうことが多く、AAE(動物介在教育)は学習などの教育目標に沿って実施されます。

うつ病の治療においてアニマルセラピーは抑うつ症状の緩和や入院患者の孤独感の軽減に役立つ可能性が指摘されています。動物は判断や評価をせず、ただそこにいるだけで無条件の受容を示してくれます。

うつ病の時にペットを飼うことのリスクと準備

ペットとの生活は癒しや喜びをもたらしますが、その反面大きな責任と負担を伴うことを忘れてはいけません。特にうつ病の症状が重く心身ともにエネルギーが低下している時に新たな命を迎え入れることには慎重な検討が必要です。

ペットのお世話には餌代や医療費などの経済的な負担、そして散歩や掃除などの身体的な負担が毎日発生します。うつ病の悪化や再発によってこれらのお世話ができなくなった場合、ペットが健康を害したり飼育放棄に至ってしまうリスクも考えられます。

ペットを飼うことがかえって新たな大きなストレス源となってしまい、うつ病の症状を悪化させる可能性も否定できません。

  • ペットの飼育には経済的・身体的・精神的な負担が伴う
  • うつ病の症状が悪化した際、お世話ができなくなるリスクがある
  • ペットの飼育が新たなストレス源となり症状を悪化させる可能性がある

もし、うつ病の治療中や療養中にペットを迎え入れたいと考える場合は、まず主治医や家族と十分に相談し心の状態が比較的安定している時期を選ぶことが賢明です。

また万が一、体調が悪化してお世話ができなくなった場合に備えて、家族や友人、ペットシッターなど頼れる人やサポート体制をあらかじめ整えておくことが非常に重要です。

ペットを飼うことは治療の手段ではなく、あくまで生活の質を高めるための選択肢の一つとして冷静に判断する必要があります。

うつ病の改善にペットが果たす役割のまとめ

これまでの話を通して、ペットがうつ病で孤独感や落ち込みを抱える人々に脳科学的にも生活環境的にも、ポジティブな影響をもたらす可能性を見てきました。

オキシトシンの分泌による安心感や抗ストレス効果、そして規則正しい生活リズムの提供などは心の健康をサポートする上で重要な役割を果たすかもしれません。

しかし、ここで改めて強調しておきたいのは、ペットはうつ病の特効薬ではないということです。ペットとの触れ合いや共生はあくまで専門家による薬物療法やカウンセリングといった主軸となる治療をサポートし、心の支えとなる補助的な要素であると理解することが重要です。

自己判断でペットを治療の代わりにしようとすることは、ご自身の健康にとってもペットの幸福にとっても望ましくありません。

  • ペットはうつ病治療の主軸ではなくサポートする補助的な存在である
  • 専門家による治療と並行して生活の質を高める要素として考えるべき
  • 自分の体調とペットの健康に配慮した責任ある共生が求められる

うつ病の改善を目指す上では専門家への相談を続け治療計画を着実に進めることが最も大切です。

その上で、心の準備とサポート体制が整っているならば、新たな家族としてペットを迎え入れることは喜びと温もりに満ちた豊かな生活をもたらしてくれるでしょう。

ペットとの幸せな共生は責任と愛情そしてバランスの取れた関係性の上に成り立っていることを心に留めておく必要があります。

私の体験として

私にも、かつて深いうつ状態に苦しんだ時期がありました。仕事に向かうことがつらく、朝起きるのさえ嫌になって、人とのコミュニケーションを避けるようになっていた日々です。

そんな中で、唯一心の支えになっていたのが愛犬の存在でした。私にとってペットは、ただの家族ではなく人生の一部そのものです。「私がいなくなったら、この子の世話は誰がするのか」。その思いが責任感となり、前を向く力をくれました。

愛犬の存在が、弱っていた私を確かに支えてくれていたのだと思います。

まとめ

ペットとの触れ合いはオキシトシンなどの幸福ホルモンを増やしストレスホルモンであるコルチゾールを減少させるなど脳科学的な観点からも心の健康に良い影響をもたらす可能性があります。

ペットはあくまで治療を補助し心の支えとなる存在であり専門的な治療を優先することが最も重要です。

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