心の元気をつくる「セロトニン」と「自律神経」の不思議な関係

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最近なんだか気分がすぐれない、やる気が出ない、体がだるいといった悩みはありませんか。その原因として、よく耳にするのが「セロトニン」や「自律神経」という言葉です。一体これらは何なのでしょうか。本記事では、私たちの心の安定と体の調子を整えるこの二つの大切な働きについて、分かりやすく解説します。

幸せホルモン「セロトニン」って何?

セロトニンは、脳で働く神経伝達物質の一つです。通称「幸せホルモン」と呼ばれ、気分の安定や不安の軽減に関与しますが、気分はセロトニンだけで決まるわけではなく、他の神経伝達物質や生活環境も影響します。

セロトニンは必須アミノ酸トリプトファンから体内で合成されます。セロトニンそのものは血液脳関門を通過しないため、食事で摂ったトリプトファンが脳内へ取り込まれ、そこでセロトニンに変わります。

体内のセロトニンの多くは腸のEC細胞で作られ、腸の運動を調節しますが、腸で作られたセロトニンは脳へ直接は届きません。

  • 精神の安定

    不安やいらだちを和らげ、ストレスへの適応を助けます。ただし気分は多因子的であり、セロトニン以外の要因も関与します。

  • 睡眠・概日リズム

    夜間に松果体でメラトニンの材料となり、眠りのタイミングづくりと睡眠の質に寄与します。

  • 食欲・食行動の調整

    満腹感や食行動のコントロールに関与し、食べすぎ・食べなさすぎの抑制に役立ちます。

  • 腸のはたらき

    腸管の動きを整え、消化のリズムを保つのに役立ちます。腸で作られたセロトニンは脳には直接作用しません。

このように、セロトニンは気分・睡眠・食行動・腸の機能に幅広く関わります。日々の食事からトリプトファンを適切に摂り、睡眠・運動・日光曝露などの生活習慣を整えることが、セロトニンの健全な働きを支えるうえで大切です。

心身の司令塔「自律神経」の働き

自律神経は私たちが意識しなくても、体のあらゆる働きをコントロールしている神経のことです。たとえば、寝ている間も心臓が動き続けたり、呼吸を続けたりできるのは、この自律神経のおかげです。

自律神経には、アクセルの役割をする交感神経と、ブレーキの役割をする副交感神経の2つがあります。この二つの神経がバランスをとりながら、私たちの体は動いています。

日中に活動したり、緊張したりするときは交感神経が優位になり、心臓の鼓動が速くなったり、血圧が上がったりします。

逆に、夜に休んだり、リラックスしたりするときは、副交感神経が優位になり、心臓の鼓動が落ち着き、体がリラックスモードになります。

このバランスが崩れると、さまざまな不調が起きてしまいます。たとえば、夜になっても交感神経が優位なままだと眠れなくなったり、朝になっても体が活動モードに切り替わらず、だるさを感じたりします。

これが、いわゆる「自律神経の乱れ」です。自律神経は全身の臓器とつながっているため、乱れが続くと、めまい、頭痛、便秘など、さまざまな体の不調を引き起こします。

自律神経は、私たちの意志とは関係なく勝手に働いてくれる心身の司令塔のような存在です。この司令塔が正常に機能することが、健やかな毎日を送るための基本となります。

セロトニンと自律神経の深い関係性

セロトニンと自律神経には密接な関わりがあります。セロトニンは脳幹や視床下部などの中枢に作用して、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の働きを調整し、切り替えを助けます。

ただし、切り替えを左右する要因は他にも多数あり、セロトニンだけで決まるわけではありません。

セロトニンの働きが適切で、朝の光・日中の活動・夜のリラックスといった生活リズムが整うと、朝は目覚めやすく、夜は自然に眠りにつきやすくなります。睡眠はGABAやメラトニンなど他の仕組みの影響も大きい点を押さえておくと安心です。

一方で、セロトニン機能が低下・乱調になると、この自律神経の切り替えがうまくいきにくくなる場合があります。その結果、昼間の倦怠感や夜間の入眠困難といった症状が現れることがありますが、原因は多因的で人によって異なります。

ストレスが加わると、急性期にはセロトニンの放出が一時的に高まることがあり、慢性的なストレスでは合成や受容体の働きが変化して機能の乱れにつながることがあります。その結果、自律神経のバランスが崩れやすくなり、負のループに陥ることがあります。

このように、セロトニンは自律神経の安定に関与し、心身の健康を支える重要な存在です。セロトニンと自律神経は相互に影響し合うため、両方を意識してケアすることが大切です。

朝の光を浴びること、適度な運動、規則正しい睡眠、トリプトファンを含む食事を意識することが、健全なバランスを保つ助けになります。

セロトニンと自律神経を整える方法

心を元気にするのに必要なセロトニンと自律神経を整える方法を考えてみましょう

セロトニンを味方につけるには?

セロトニンを増やすには、以下のような方法が有効です。

  • 朝日を浴びる: 朝日を浴びることで、セロトニンの分泌が活性化されます。
  • リズム運動: ウォーキングやジョギング、咀嚼(そしゃく)など、一定のリズムを刻む運動が効果的です。
  • 食事: セロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食品(牛乳、チーズ、大豆製品、ナッツなど)を積極的に摂りましょう。
  • コミュニケーション: 笑顔で誰かと会話することも、セロトニンを増やす良い方法です。

自律神経を強くするには?

自律神経を強くするためには、日々の生活リズムを整えることが最も大切です。毎朝同じ時間に起きて朝日を浴びることで、体内のリズムが整い、交感神経への切り替えがスムーズになります。

また、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで、リラックス効果が高まり、副交感神経が優位になります。他にも、適度な運動やバランスの取れた食事が、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。

これらの方法を日々の生活に取り入れることで、セロトニンが十分に分泌され、自律神経のが整い、心身ともに健やかな状態を保つことができます。

周囲にいる家族や友人ができること

もし、家族や友人がうつ病自律神経の不調で苦しんでいる時、周りの人はどう接すれば良いのでしょうか。まず大切なのは、本人に寄り添い、話を聞いてあげることです。

「頑張れ」といった励ましの言葉は、かえって本人のプレッシャーになることがあるので避けましょう。今のつらい気持ちを否定せず、ありのままを受け入れてあげることが重要です。

また、完璧主義な性格の人は、自分の不調を周りに知られることを嫌う傾向があります。無理に外出を誘ったり、元気を出させようとしたりせず、まずは本人のペースを尊重してあげましょう。

必要な時は、一緒に医療機関を訪れたり、専門家への相談を促したりすることも大切です。

そして、一番忘れてはいけないのが、サポートする家族自身の心のケアです。大切な人を支えることは、大きなエネルギーを必要とします。

一人で抱え込まず、周囲に助けを求めたり、息抜きの時間を作ったりすることも非常に重要です。家族や友人が心身ともに元気でいることが、本人の回復にもつながるのです。

まとめ

私たちの心を元気にしてくれる「セロトニン」と、体の調子を整える「自律神経」は、実は深くつながっています。心が不安定になったり、体がだるかったりするのは、この二つのバランスが崩れているせいかもしれません。

日々の暮らしの中で朝日を浴びたり、好きな音楽を聴きながら散歩したりするだけで、心のバランスを整えることができます。

もし身近な人がつらそうにしていたら、「頑張れ」と励ますのではなく、ただそばにいて、優しく話を聞いてあげましょう。そっと見守ることが、何よりの支えになります。

あとがきー私の体験から伝えたいこと

この記事を書くにあたり、私自身もまたうつ病と向き合いながら働く一人として、セロトニンや自律神経について改めて深く考えるきっかけとなりました。

日々、仕事や生活の中で感じる不調の原因を理解し、小さな工夫を積み重ねることが、どれほど心の支えになるかを実感しています。

セロトニンを増やすためのウォーキングや、自律神経を整えるための早寝早起きなど、一つひとつの行動が自分を大切にすることにつながると信じています。この経験が、同じように悩む誰かの助けになれば幸いです。

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