障害年金は、病気やけがで生活や仕事に制限がある方を支える大切な制度です。しかし、制度のしくみが複雑で、これから申請を考えている方や受給中の方の中には、不安を感じている人もいるかもしれません。最近は、審査方法が見直され、不支給になるケースが増えているという話も聞きます。本記事では、障害年金のしくみや、2025年度の審査の傾向、そして不支給を防ぐための対策について、分かりやすく解説します。
障害年金ってどんなしくみ?
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の二種類があります。これは、加入している年金の種類によって分かれます。
障害基礎年金は、自営業の方や学生など、国民年金に加入している人が対象です。障害厚生年金は、会社員や公務員など、厚生年金に加入している人が対象になります。
この二つの年金は、受給できる条件や金額の計算方法が異なるため、自分がどちらに当てはまるかを知ることが大切です。
受給資格の確認ポイント
障害年金を受給するには、主に以下の二つの要件を満たす必要があるでしょう。
- 初診日: 障害の原因となった病気やけがで、初めて病院を受診した日のことです。この日を証明することが、申請手続きの最初のステップになります。
- 保険料納付要件: 初診日の前日までに、決められた期間の年金保険料を納めている必要があります。この要件を満たしているかは、年金事務所などで確認できるでしょう。
要件を満たしていないと、申請手続きに進めないため、まずはご自身の状況を確認してみるのが良いです。
障害年金は、たとえ働いていても、労働に制限がある場合や、特別な配慮が必要な場合でも、申請できる可能性があります。
「働いているから自分はもらえない」と諦めずに、まずは制度について調べてみることをおすすめします。この制度は、病気やけがで生活に困難を抱えている人が、安心して暮らすための大切なセーフティーネットです。
2025年度はいくらもらえる?
2025年度に障害年金を受給する場合、もらえる金額は障害の程度や年金の種類によって変わるでしょう。一般的に、障害の程度は1級、2級、3級に分けられ、それぞれもらえる金額の目安が定められています。
障害基礎年金
障害基礎年金の場合、1級は約103万円、2級は約83万円が目安になるでしょう。これに加えて、お子さんがいる場合は子の加算額がプラスされることもあります。
正確な金額は個々の状況によって異なるため、あくまで目安として捉えることが大切です。
障害厚生年金
令和7年4月からは、障害厚生年金の年金額が以下のように変わります。
- 1級: 報酬比例の年金額に1.25をかけた金額と、配偶者がいる場合には23万9,300円が加算されます。
- 2級: 報酬比例の年金額と、配偶者がいる場合には23万9,300円が加算されます。
- 3級: 報酬比例の年金額のみとなりますが、最低保障額は62万3,800円、または62万2,000円になるでしょう。
障害の程度が3級に満たない場合でも、一定の条件を満たせば「障害手当金」として一時金が支給されることがあります。
自分が受給資格を満たしているかを確認することが重要です。年金額は毎年見直されるため、年度ごとに確認が必要です。正確な金額は、厚生労働省や日本年金機構の発表を待つ必要があるでしょう。
なぜ不支給が増えているのか?
近年、障害年金の審査方法が以前よりも厳しくなっているという話を聞くでしょう。不支給になるケースが増えている背景には、いくつかの要因が考えられます。特に注目されているのが、就労状況の評価です。
以前は、働いていること自体が「障害が軽度である」と判断される傾向がありました。しかし、現在は、働けている理由や、どのような配慮を受けているかなどがより詳しく見られるようになっているようです。
例えば、短時間勤務や、在宅での仕事、周囲のサポートがなければ仕事が続けられないといった状況は、審査において考慮されるポイントになるでしょう。
情報を診断書や病歴・就労状況等申立書でどれだけ正確に伝えられるかが、審査の鍵を握ります。具体的には、以下のような点が挙げられるでしょう。
審査の現状とポイント
審査の傾向が変化している背景には、さまざまな要因があります。
- 審査方法の見直し: 審査は、より個々の状況を詳細に確認する方向へ進んでいると言われています。
- 就労状況の評価: 働いている場合でも、その働き方にどのような制限や困難があるかが重要視されるようになったようです。
- 診断書の記載内容: 医師が書く診断書の内容が、以前より厳しくチェックされる傾向にあります。
これらの変化により、以前は受給できたかもしれない方が、不支給になるケースが増えているのでしょう。
大切なのは、単に「働けない」と伝えるのではなく、「なぜ働けないのか」、または「働くためにどのようなサポートが必要か」を具体的に伝えることでしょう。
審査に通りやすくする改善ポイント
審査をスムーズに進めるためには、診断書と病歴・就労状況等申立書という二つの大切な書類を、正確に作成することが大切です。
この書類は、あなたの障害が日常生活にどのような影響を与えているかを審査員に伝えるための重要なツールです。
診断書と申立書のポイント
診断書は医師が作成しますが、あなたの日常生活の困難さを医師に具体的に伝えることが重要です。
「家事ができない」「一人で外出するのが難しい」「人とのコミュニケーションが苦手」など、具体的な困りごとを伝えましょう。
病歴・就労状況等申立書は、あなたの言葉で書くからこそ、思いが伝わる重要な書類です。診断書と矛盾しないように、発病から現在までの経緯を時系列で詳しく記載しましょう。
単に「体調が悪い」と書くのではなく、「体調が悪いため、週に何回しか買い物に行けない」といったように、数字や具体的なエピソードを交えることで、より説得力が増すでしょう。
申立書には、家族やヘルパーなど第三者の意見を盛り込むのも効果的です。診断書と申立書の内容に一貫性を持たせることで、審査員にあなたの状況を正確に伝えることができます。
書類を丁寧に作成し、不備なく提出することが、不支給のリスクを減らすことにもつながるでしょう。
もし不支給になったらどうすればいい?
万が一、障害年金の申請が不支給になってしまっても、そこで諦める必要はありません。障害年金の審査結果に納得がいかない場合には、不服申し立てを行う制度が設けられています。
不服申し立ての制度を理解する
不服申し立てには、「審査請求」と「再審査請求」の二つの段階があります。まずは、最初の段階である審査請求について理解を深めましょう。
審査請求は、不支給決定を知った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。期限が限られているため、迅速な対応が求められるでしょう。
審査請求では、「なぜ不支給になったのか」という通知書の内容を詳しく分析し、それを覆すための新たな証拠や補足情報を提出することが重要です。
診断書の内容が不十分だった場合は、医師に再度相談して詳しい内容を書いてもらったり、日常生活の困難さをより具体的に説明する資料を、準備したりする必要があるでしょう。
専門家と連携する
不服申し立ての手続きは複雑で、一人で行うのが難しいです。この手続きを専門としている社会保険労務士(社労士)に相談することで、成功率が高まります。
社労士は、不支給になった理由を分析し、どのような情報を補足すべきか、具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。必要に応じて、医師や年金事務所とのやり取りもサポートします。
不支給になったからといって諦めずに、制度を上手に活用することが、受給への道を開く大切な一歩になるでしょう。
まとめ
障害年金の審査は、就労状況や診断書の記載内容がより詳しく見られる傾向にあります。不支給が増えている背景には、これらの審査方法の変化が考えられます。
診断書や申立書では、日頃の日常生活の困難さや具体的なエピソードを詳しく伝えることが重要です。また、申請前には年金加入要件や初診日の証明など、書類に不備がないか確認しましょう。
もし不支給になっても、不服申し立ての制度を利用できます。専門家と連携することで、成功率が高まります。
あとがき
障害年金は、あなたの生活を支える大切な制度です。手続きや仕組みが難しいと感じるかもしれません。私の体験では書類を揃えて申請、受理まで約3ヶ月かかりました。
社労士など、専門家の力を借りることも選択肢に入れてみてください。申請手続きをスムーズに進める一助となれば幸いです。
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