就労継続支援A型事業所の運営において、車椅子に対応した福祉車両の導入は、利用者の受け入れ幅を広げるための大変好ましい選択肢の一つです。しかし、車両の種類や導入コストに悩む担当者の方も多いでしょう。本記事では、2026年の最新状況を踏まえた福祉車両の種類や選び方、助成金情報のほか、バスタイプの特殊車両などの豆知識まで、運営に役立つ情報をわかりやすく解説します。
福祉車両の基礎知識とA型事業所に導入するメリット
福祉車両とは、身体の不自由な方が安全かつスムーズに移動できるよう、特別な設計が施された車両の総称です。
就労継続支援A型事業所においては、必ずしも導入が義務付けられているわけではありませんが、車椅子を利用される方の雇用を検討する際、送迎の選択肢としてこうした車両があることは非常に望ましいといえます。
福祉車両を所有することで、自力での移動が困難な方の就労をサポートし、事業所としての社会的な役割やサービスの質を一層高めることが期待できます。
主な種類としては、車椅子のまま乗り降りできる「車椅子仕様車」のほか、座席が回転したり車外へせり出したりする「昇降シート車」などがあります。多くの福祉現場で選ばれているのは、移乗の負担が少ない車椅子仕様車です。
- 車椅子仕様車:車両後方や側面から、車椅子のままスロープやリフトで入るタイプです。
- 昇降シート車:助手席や後部座席が電動で動き、車椅子からの乗り移りを助けます。
- 回転シート車:座席が外側に向くことで、足腰が弱い方の乗降をサポートします。
導入にあたっては、まず自所の利用者のニーズを把握することが大切です。例えば、車椅子から座席への移乗が可能な方が多いのか、それとも車椅子のままの移動が必要なのかによって、選ぶべき車種や装備が大きく変わります。
用途に合わせて最適な一台を選ぶことが、スタッフの介助負担軽減にもつながります。
スロープ式とリフト式の違い!介助スタイルに合わせた比較
車椅子仕様車のなかでも、乗降の仕組みには「スロープ式」と「リフト式」の2種類があり、それぞれに特徴があります。スロープ式は、車両後部に設置された板を引き出し、車椅子を押してスライドさせるタイプです。
構造がシンプルで扱いやすく、軽自動車からミニバンまで多くの車種に採用されています。対してリフト式は、電動でプラットフォームを昇降させるため、介助者が車椅子を押し上げる力が必要ありません。
| 項目 | スロープ式 | リフト式 |
|---|---|---|
| 主な乗降方法 | 傾斜板を歩いて押し上げる | 電動プラットフォームで昇降 |
| 操作のしやすさ | 手動または電動ウインチ併用 | リモコンひとつで全自動 |
| 車両サイズ | 軽〜コンパクトカーが多い | 大型のワゴン・バスに多い |
| 介助者の負担 | 腕力や腰への負担がある場合も | 電動のため負担は最小限 |
小規模なA型事業所や、住宅街などの狭い道を通る送迎ルートが多い場合は、スロープ式の軽自動車が取り回しやすく重宝されます。
一方、電動車椅子など重量のある車椅子を使用する利用者がいる場合や、送迎人数が多い大規模な事業所では、介助スタッフの負担を減らせるリフト式が非常に有利です。
また、設置スペースの確認も重要です。スロープ式は車両の後方にスロープを伸ばすための広い空間が必要ですが、リフト式は垂直に動くため、後方のスペースを抑えられる場合があります。駐車場や送迎ポイントの環境を考慮して選ぶのが良いでしょう。
A型事業所の規模で選ぶ!おすすめの車種ラインナップ
福祉車両の車種は、利用者の人数や事業所の環境に合わせて選ぶのが最も効率的です。現在、多くの福祉事業所で選ばれている定番の車種をいくつかご紹介します。
まず、少人数の送迎や街中での機動性を重視するなら、ホンダのN-BOXやダイハツのタントといった軽自動車の車椅子仕様車がおすすめです。
これらは維持費が安く、初めて福祉車両を導入する事業所にとってもハードルが低いといえます。
また、もう少し利用人数の幅を広げたい場合には、コンパクトミニバンが選択肢になります。車椅子利用にも対応しつつ、大型車に比べて取り回しの負担が少ない点が魅力です。
- 軽自動車タイプ:狭い道でも安心。1名分の車椅子スペースを確保。
- ミニバンタイプ:家族的な雰囲気での送迎に最適。乗り心地も良好。
- 大型ワゴンタイプ:一度に複数の車椅子利用者を送迎できる。
一方で、一度に多くの利用者を送迎するニーズがある場合は、トヨタのハイエースや日産のキャラバンといった大型ワゴンが第一候補となります。
これらの車両は、車椅子を2台から最大4台まで同時に載せられるカスタマイズも可能で、送迎の効率化に大きく貢献します。
車種選びの際は、実際に車椅子を固定した後に「車内での介助スペース」がどれくらい残るかも確認してください。移動中にスタッフが利用者の様子をすぐに確認できる座席配置になっているかどうかは、安全運行の観点からも非常に大切なポイントです。
2026年度に備えて!導入を助ける助成金と税制優遇
福祉車両は特殊な装備が必要な分、通常の車両よりも価格が高めですが、様々な公的支援を受けることができます。まず注目すべきは、車椅子仕様車としての認定を受けた車両は、消費税が非課税になるという点です。
これは車両本体価格だけでなく、オプション品にも適用される場合があります、10%の差は非常に大きなコストカットとなります。
また、2026年度に向けても各団体による助成金事業が予定されています。代表的なものとして「日本財団」の福祉車両助成があり、これまでの傾向から2026年度も募集が行われる可能性が高いです。
~2025年度におきましても、2024年度同様に福祉車両助成事業を行う予定です。事業の詳細につきましては、2025年6月16日に、日本財団ホームページ上でご案内予定ですので、今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます~
(※上記は2025年度の案内ですが、例年6月頃に翌年度以降の計画が発表されるサイクルとなっています。2026年度の導入を検討される方は、次年度の情報を確認してご検討してください。)
他にも、自治体によっては自動車税や軽自動車税の減免措置が受けられる場合があります。事業所として障害者送迎の実態を証明することで、維持費の大幅な軽減につながります。
導入を決める前に、必ず最寄りの役所や税務署、あるいは福祉車両に強い販売店へ相談し、利用可能な制度を全て洗い出しておくことを強くおすすめします。
安全な運用のポイントと大型車両の豆知識
福祉車両を導入した後は、スタッフ全員が操作に習熟し、安全に運行できる体制を整えることが大切です。特に車椅子の固定は、わずかな緩みが走行中の事故につながるため、定期的な講習を行うことが望ましいです。
また、バックカメラやソナーなどの安全装置は、死角が増えがちな福祉車両にとって今や必須の装備といえます。
ここで豆知識ですが、車椅子を乗せられるのは軽自動車やミニバンだけではありません。実は、マイクロバスや大型バスにも車椅子対応の車両が存在します。
~30年以上前から車いす利用者さまと家族の皆さまを支え続けるリフト。
軽乗用車から大型バスまで、車両に合わせた設計で安心・安全をお届けしています。
移動手段の補助という役割に加えて、災害時にも活躍できるリフトなど幅広く活用され社会貢献をしています。~
観光バスタイプのリフト付き車両であれば、車椅子を利用される方も一緒に長距離の研修旅行やレクリエーションを楽しむことができます。
A型事業所単独で保有するのは稀ですが、行事の際にこうした車両をレンタル・チャーターするという選択肢を知っておくと、活動の幅が大きく広がります。
- 寸法確認:車椅子を乗せた時の「高さ」が、駐車場の天井に干渉しないかチェック。
- メンテナンス:スロープの可動部やリフトの油圧系統は、定期点検を欠かさない。
- スタッフ教育:万が一の故障や停電時の「手動操作」の方法も共有しておく。
福祉車両は、利用者の「働きたい」という気持ちを支える大切な架け橋となります。安全な車両管理と適切な活用で、事業所の可能性をさらに広げていきましょう。
まとめ
A型事業所において福祉車両は、利用者の選択肢を広げる好ましい設備です。スロープ式やリフト式、軽自動車から大型ワゴンまで種類は多岐にわたるため、運営規模に合わせて選びましょう。
導入時は消費税非課税や、2026年度も予定される日本財団等の助成金を賢く活用することがコストを抑える鍵です。また、マイクロバスや大型バスの福祉仕様を知っておくことで、レクリエーションの幅も広がります。
安全運行のためには、定期的なメンテナンスとスタッフへの操作講習が欠かせません。利用者の安心を守りつつ、事業所の魅力を高める一台を見つけてください。
あとがき
実は、私はかつて某トラック・バスディーラーに勤務しており、当時はマイクロバス福祉車両の新車登録業務に深く携わっていました。
大型の特殊車両を扱っていた経験から、車両の構造や安全装置がいかに大切かを肌で感じてきました。
今回は軽自動車やワゴンタイプを中心に紹介しましたが、導入を検討されているA型事業所の皆様にとって、本記事が最適な一台を選ぶためのヒントとなり、運営の一助になればこれほど嬉しいことはありません。

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