障がいを持って働くすべての人を応援する「就労定着支援」は、長く安心して働くための心強い味方です。この制度は、一般企業に就職した後も定着をサポートし、職場での悩みや困りごとを解決に導きます。利用の対象者や支援内容、利用の流れなど制度を詳しく解説。重要なこの支援を理解し、より良い働き方を見つけるヒントを提供します。本記事では、就労定着支援の全体像をわかりやすくお伝えします。
就労定着支援とは?長く安心して働くためのサポート
就労定着支援とは、障がいのある方が一般企業などに就職した後も、安定して働き続けられるようサポートする福祉サービスです。この支援の目的は、単に「就職させること」ではなく、「職場に定着し、長く活躍できること」にあります。
就職が決まっても、新しい環境での人間関係や業務内容への適応、体調管理など、さまざまな壁に直面することがあります。
そうした時に、支援員が本人・企業・関係機関と連携を取りながら、働き続ける上での課題解決をサポートしてくれます。これは雇用主である企業にとっても、優秀な人材の離職を防ぐ上で非常に重要な支援となります。
対象となるのは、就労移行支援や就労継続支援などの福祉サービスを利用を経て、企業で働いている障がいのある方です。この支援は、障害福祉サービスの一つとして提供されており、「障害者総合支援法」に基づいています。
就労定着支援のポイント
- 目的: 障がい者の安定した職場定着と長期的な就労継続を支援すること。
- 対象者: 福祉サービス経由で就職した、企業で働く障がい者全般。
- 期間: 就労開始から最長3年6ヵ月のサポート。
- 主な支援: 職場・生活・体調面での課題解決に向けた調整。
この支援は、就職後も一人で悩みを抱え込まず、安心して仕事に取り組むためのセーフティネットの役割を果たします。
特に、環境の変化に慣れるまでの期間や、新たな課題が生じた際に、専門的な視点から適切なアドバイスやサポートを受けることが可能です。
この制度は、多様な働き方が求められる現代社会において、誰もが働きやすい環境を作る上で欠かせない要素です。
~2018年4月から就労定着支援が始まりました。これは、障害のある方の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする福祉サービスです。~
支援の内容と対象者 どんな人がどんなサポートを受けられる?
就労定着支援で受けられるサポートは、働く上で生じる具体的な困りごとに対応するため多岐にわたります。支援の中心となるのは、職場、生活、健康管理の3つの側面です。
職場での支援としては、上司や同僚との人間関係、業務の進め方や量に関する企業との調整、職場で利用できる支援制度の活用サポートなどがあります。
例えば「仕事が多すぎてつらい」と感じた場合に、企業側に仕事の量の調整を依頼するなど、本人の意向を尊重しつつ企業との橋渡し役を果たします。
生活面での支援も重要です。仕事と私生活のバランス(ワークライフバランス)の取り方、通勤に関する不安、金銭管理、住居に関する悩みなど、日常生活の課題が仕事に影響を及ぼさないようサポートします。
健康管理の支援では、障害特性に応じた体調の変化への対応方法を一緒に考えたり、医療機関や福祉サービスとの連携を図ったりします。体調不良で休職しそうになった際も、スムーズな復職に向けた計画を立てるサポートを行います。
これらの支援は、月に1回以上、支援員が本人と面談し、必要に応じて企業や自宅、電話などで状況を確認しながら行われます。
支援計画は個々のニーズに合わせて作成され、利用者の主体的な働き方を支えます。このきめ細やかなサポート体制が、障がいのある方の職業生活の長期化に大きく貢献します。
対象となるのは誰?利用できる条件と期間
就労定着支援を利用できるのは、以下の要件を満たす方々です。性別に関係なく、年齢は18歳から64歳までの幅広い障害を持つ人々が利用可能です
主な対象となるのは、以下の障害福祉サービスを利用した後に、一般企業などに就職し、雇用されている方です。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 自立訓練事業所(機能訓練、生活訓練)
職場で安定して働くための土台作りとして非常に重要視されています。利用開始後も、支援が必要な状況が続いているか定期的に確認が行われます。
3年間の支援期間を終えた後も、必要に応じて障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)などの別の支援機関に引き継ぎが行われ、切れ目ないサポートが提供されます。
利用開始の流れと 安心への第一歩を踏み出すには
就労定着支援を利用するためには、まずお住まいの市区町村の窓口で相談・申請を行う必要があります。利用開始までの大まかな流れは以下の通りです。
1. 相談・申請: 市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業者に相談し、サービス利用の意向を伝えます。
2. サービス等利用計画の作成: 相談支援専門員が、利用者の希望や課題を把握し、どのような支援が必要かを示す「サービス等利用計画」を作成します。
3. 支給決定: 市区町村が、作成された計画や利用者の状況を確認し、サービスの利用を認めるか(支給決定)を判断します。
4. 事業所との契約: 支給決定後、利用者が就労定着支援を行っている事業所と利用契約を結びます。
5. 支援の開始: 事業所の支援員が、本人・企業・関係機関と連携を取りながら、個別の支援計画に基づきサポートを開始します。
利用にかかる費用
就労定着支援は、障害者総合支援法に基づくサービスのため、利用料金は前年度の所得に応じて決まります。
具体的な自己負担額の上限は、厚生労働省の定める基準に基づいており、生活保護受給世帯や低所得世帯は負担なしと定められています。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口や利用を検討している事業所に確認してください。
企業にとってもメリット 就労定着支援がもたらす効果
就労定着支援は、障がいを持つ従業員の方だけでなく、雇用する企業側にも多くのメリットをもたらします。企業にとって最も大きなメリットは、採用した人材の早期離職を防ぎ、安定した雇用を確保できる点です。
障がいを持つ従業員が職場で直面する課題は、企業側の工夫や配慮で解決できる場合が多いですが、何が問題でどう対応すべきか、企業だけで判断するのは難しいことがあります。
そこで、就労定着支援事業所の専門員が、本人と企業の間に入り、スムーズなコミュニケーションと問題解決をサポートします。
具体的には、企業への専門的な助言として、業務の切り出し方、適切な配慮事項(合理的配慮)、他の従業員への理解促進の方法などを提供します。
これにより、企業は専門知識がない状態でも、従業員に対して適切なサポート体制を整えることが可能になります。
また、支援員が間に入ることで、企業側も従業員に対して直接言いにくいことや、求める配慮の範囲を明確に伝えやすくなります。これは相互理解を深め、より健全な雇用関係を築く上で非常に有効です。
就労定着支援を活用することは、単なる福祉制度の利用にとどまらず、企業が多様性を尊重し、持続可能な経営を実現するための一歩となるでしょう。
この支援は、障害者雇用を成功させ、企業全体の生産性の向上にもつながる双方に利益のある仕組みなのです。
まとめ
就労定着支援は、障がいのある方が一般企業に就職した後も、長く安心して働き続けるための公的なサポートです。支援員が、職場や生活、体調面の課題について本人と企業を支援し最長3年6か月間、多くの方が無料で利用できる心強いセーフティネットです。
この支援を活用することで、障がいのある方は自信を持って仕事ができ、企業側も安定した雇用を確保出来るでしょう。まずは市区町村窓口へ相談し、未来への一歩を踏み出しましょう。
あとがき
就労定着支援が「就職後も長く活躍できる」ことに主眼を置いた、非常に重要な制度であることが理解できました。
また支援の対象が、職場、生活、体調管理という三つの柱に明確に分かれており、就職後に相談出来る制度は色んな不安を解消出来ると思います。ぜひ働きながら、悩み事があれば一人で悩まずこの制度を利用しては如何ですか?

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