障がいや病気を持つ本人やその家族が、同じような経験を持つ仲間から受ける精神的あるいは社会的なサポートをピアサポートと言います。ピア(peer)は「仲間」や「同僚」を意味し、専門職による支援とは異なり、経験を分かち合うことで得られる共感や安心感が大きな特徴です。年齢や性別に関係なく、障がい者本人と家族にとって生活の質を高める上で重要な役割を果たすでしょう。本記事では、ピアサポートの本質と具体的な役割について詳しく解説します。
障がい者本人と家族のためのピアサポートの力
ピアサポートは、障がい者や難病を抱える人、あるいはその家族が、同じような状況や経験を持つ人から受けるサポートのことです。
この支援の最大の魅力は、何よりも共感と安心感です。例えば、障がいや病気の種類、あるいは子育てや介護の苦悩は、経験した本人でなければなかなか真に理解することはできません。
ピアサポーターは、その経験者として「その気持ちはよくわかる」という強い共感をもって接することで、孤立感を抱きがちな本人や家族に精神的な支えを提供するでしょう。
専門職による支援が治療や制度の適用など外的な解決を目指すのに対し、ピアサポートは精神的な回復や本人の自立に向けた意欲向上に焦点を当てます。
このアプローチは、生活や人生に対する主体性を取り戻す上で非常に重要だと考えられています。実際に、厚生労働省も障害福祉サービスの中でピアサポートを有効性の高い支援形態の一つとして位置づけています。
支援の対象となるのは、何かしら共通の課題や困難、経験を持つ人々になります。
~世の中には病気、障がい、介護、犯罪被害など、さまざまな理由で苦しみや生きづらさを抱える人が多くいます。そんな同じ生きづらさを抱える仲間同士で支え合うことをピアサポートと呼びます。~
ピアサポートが本人(障がい者)にもたらす効果
障がいを持つ本人にとって、ピアサポートは生活を改善させる鍵となり得ます。障がいの診断直後や社会生活での壁にぶつかった時、人は強い孤立感や絶望感を抱きがちです。
しかし、ピアサポーターという「経験者」と出会うことで、「自分だけではない」「この状況を乗り越えられる」という希望を見出すことができるでしょう。
【ピアサポートによる本人への主な効果】
- 精神的な安定:経験者との共感的な対話を通じて、不安やストレスが軽減され、心の安定が得られるでしょう。
- 孤立の解消:共通の経験を持つ仲間とつながることで、社会からの孤立感が解消されると考えられます。
- 情報の共有:手帳の申請、福祉サービスの利用、就労に関する情報が手に入りやすくなります。
- 生活の質の向上:具体的な生活上の工夫や知恵を学び、自立した生活への意欲が高まる事もあります。
- 主体性の回復:受動的な支援を受ける側から、自分の人生を自ら選択し行動する主体性を取り戻すでしょう。
ピアサポートは本人の心のバリアを取り払い、社会との接点を再び持つための橋渡し役を手伝います。
例えば、高齢になって身体機能に変化が生じた人が、同じ経験を持つ先輩から介護保険の活用法や自宅での工夫を教わることで、自信をもって生活を続けることができるようになるでしょう。
ピアサポートが家族(支援者)にもたらす効果
障がい者を支える家族は、しばしば本人以上に複雑で重い負担を抱えています。終わりの見えない介護や看護の重圧、将来への不安、周囲からの無理解や孤立など、精神的にも肉体的にも限界に達してしまうケースは少なくありません。
ピアサポートは、こうした家族や支援者にとっても不可欠なセーフティネットとして機能します。
家族にとってのピアサポートの最大の価値は、感情の吐き出し口と具体的な解決策の両方を得られる点にあります。専門家には話しにくい育児や介護の具体的な苦労や愚痴も、同じ境遇を経験したピアサポーターには遠慮なく話すことができるでしょう。
家族の心が軽くなることは、長く支援を続けていくためのエネルギーの一つになると考えられます。
【家族(支援者)への具体的なサポート内容】
- 介護負担の軽減:共感を得ることでストレスが減り、心理的な負担が和らぎます。リフレッシュするためのきっかけも得られるでしょう。
- 具体的なノウハウ:どの病院がいいか、どの制度が利用できるか、学校との連携はどうするかなど、経験者ならではの実用的な情報を聞ける事もあります。
- 社会資源へのアクセス:行政や地域のサービスに関する情報を共有してもらい、支援を多角的に受けるきっかけになる可能性が考えられます。
- メンタルヘルスの維持:自分自身の健康や生活も大切にしていいという気づきを得て、共倒れを防ぐ助けとなります。
家族(支援者)へのピアサポートは、本人への支援の質を向上させる上でも重要です。家族が心身ともに健康でいることで、本人も安心して生活を送ることができるでしょう。
この相互扶助の精神こそが、地域全体の福祉力を底上げすることにつながるのです。家族会や当事者会に家族が参加することも、ピアサポートを受け取るための具体的な方法の一つです。
ピアサポートの具体的な活動と提供方法
ピアサポートの活動は、当事者や家族のニーズに応じて多岐にわたりますが、最も一般的なのは相談活動と居場所づくりです。
個別またはグループでのミーティングや茶話会形式で実施されることが多く、リラックスした雰囲気の中で胸の内を語り合うことが目的となります。
相談活動では、ピアサポーターが相手の話に注意深く耳を傾けます。ただ黙って話を聞く姿勢は、相談者に「受け入れられている」という感覚を与え、心の整理を促します。
また、必要に応じて、サポーターが自分の経験を語ることで、「困難な状況を乗り越えるためのヒント」を提供します。障がい者や家族が気兼ねなく参加できるよう、オンラインでの相談窓口を開設している団体も増えています。
【ピアサポートの主な活動形態】
- 個別相談:一対一で深い悩みやプライベートな問題についてじっくりと話を聞きます。
- グループ活動:共通の障がいや課題を持つ仲間が集まり、情報交換や相互の励まし合いを行います。
- 居場所づくり:特定の目的を持たず、ただそこに居ることで安心感を得られる場を提供します。
- アウトリーチ:病院や施設へサポーターが訪問し、退院や退所後の生活への不安を和らげるでしょう。
- 啓発活動:地域や社会に対して、障害や病気に関する理解を深めるための情報発信を行います。
障害福祉サービスにおいても、地域活動支援センターなどを通じてピアサポートの取り組みが行われており、多様なニーズに対応する中で、活動の幅は今後も広がっていくとみられます。
ピアサポートをより効果的に活用するために
ピアサポートの効果を最大限に引き出すためには、本人や家族が主体性を持って活動に参加し、適切な支援を選ぶことが重要です。まず、ピアサポーターや支援団体の質を見極めることが大切です。
サポーターは、自分の経験を押し付けるのではなく、相談者の話に真摯に耳を傾け、秘密を守るという基本的な倫理観を持っていることが不可欠です。研修や資格制度を導入している団体を選ぶと安心できます。
また、ピアサポートは万能ではありません。医療や法律などの専門的な問題については、医師や弁護士といった専門職の支援を並行して受ける必要があります。
ピアサポートは、専門的支援の隙間を埋め、心の部分を力強く支える役割を担います。公的支援である障害福祉サービスなどと適切に連携することで、本人と家族の生活はより安定すると考えられます。
障がい者と家族にとって、ピアサポートは人生の困難を乗り越えるための灯台のような存在でしょう。
人と人との温かいつながりを積極的に求め、孤立せずに力強い生活を築いていくための土台となる事もあります。誰もが安心して暮らせる社会の実現には、ピアサポートの存在が不可欠です。
まとめ
ピアサポートは、障がいや病気を持つ本人とその家族が、同じ経験を持つ仲間から共感や情報を得る相互支援です。対等な立場での傾聴と経験の共有を通じて、全年齢の本人と家族の精神的な安定と孤立の解消に貢献すると考えられます。
本人にとっては不安の軽減、自己肯定感、希望の回復を促し、経験者は自立へのロールモデルとなるでしょう。家族にとっては介護負担やストレスを軽減し、具体的な生活ノウハウや社会資源の情報を得る大切な場となるでしょう。
あとがき
今回、ピアサポート活動を知ることで、「ひとりじゃない」と言う安心感ができました。同じ経験や悩みなどを共有出来て相談し支え合える事は、とても大切な事だと思います。
そして新たな人間関係を築き、社会とのつながりを再構築する貴重な機会になるでしょう。


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