福祉現場で注意すべきセキュリティリスクその1

支援員
画像はイメージです

福祉の現場は、利用者さんの大切な個人情報を取り扱う、非常にデリケートな場所です。日々の業務に追われる中で、ついセキュリティへの意識が薄れてしまうことはありませんか?。しかし、その少しの油断が、取り返しのつかない情報漏洩につながる可能性があります。この記事では、特に福祉現場で起こりがちな3つのセキュリティリスクと、今日からすぐに実践できる対策を分かりやすく解説します。利用者さんと事業所、そして自分自身を守るために、一緒にセキュリティの基本を学びましょう。

福祉現場でセキュリティ対策がなぜ重要なのか?

福祉の現場では、利用者さんの氏名や住所、連絡先はもちろんのこと、病歴や障がいの特性、家庭環境といった、極めて重要な個人情報を取り扱います。これらの情報が、万が一外部に漏洩した場合、ご本人やご家族が深刻な不利益を被る可能性があります。

例えば、差別や偏見の対象になったり、特殊詐欺などの犯罪に悪用されたりする危険性も考えられるのです。だからこそ、情報を守ることは利用者さんの人権と尊厳を守ることに直結する非常に重要な責務と言えます。

また、A型就労継続支援事業所などの施設では、多くの職員や関係者が情報にアクセスする機会があります。人の出入りが多い環境だからこそ、一人ひとりが高いセキュリティ意識を持つことが不可欠です。

情報漏洩は、利用者さんからの信頼を失うだけでなく、事業所としての社会的信用を大きく損ない、運営そのものに影響を及ぼす可能性も否定できません。

法律上の罰則や損害賠償といった問題に発展するケースもあるため、セキュリティ対策は「他人事」ではなく、全職員が当事者意識を持って取り組むべき課題なのです。

今すぐやめて!端末の置きっぱなしが招く危険

業務で使用するパソコンやタブレット、スマートフォンをログインしたままの状態で、その場を離れてしまうことはありませんか。ほんの少しの時間だから大丈夫、誰も見ていないから平気、そういった油断が大きなリスクを招きます。

これが「端末置きっぱなしリスク」です。支援記録の作成中や、利用者さんからの電話対応で席を立つ際など、日常業務の中に危険は潜んでいます。

具体的なリスク事例

ログイン状態の端末を放置すると、悪意のある第三者だけでなく、他の利用者さんや関係者が誤って操作してしまう可能性も考えられます。例えば、記録中の支援日誌をのぞき見されたり、個人情報を含むファイルを勝手にコピーされたりするかもしれません。

最悪の場合、情報を改ざんされたり、ウイルスを仕込まれたり、さらには端末自体が盗難に遭う危険性もあります。短時間であっても、端末から離れる際は必ずロックをかける習慣を徹底することが、情報漏洩を防ぐ第一歩となるのです。

すぐにできる対策方法

  • 離席時のスクリーンロック
    席を離れる際は、短時間であっても必ずログアウト、またはスクリーンロック
    (例: Windowsなら「Windowsキー + L」)をする癖をつけましょう。
  • 強固なパスワード設定
    パソコンやタブレットには、必ずパスワードを設定し、第三者が容易に推測できないような、複雑なものにすることが重要です。
  • 自動ロックの設定
    一定時間操作がない場合に、自動でスクリーンセーバーや画面ロックがかかるように設定しておくことも、非常に有効な対策の一つです。

「みんなで使えば便利」が落とし穴!共有アカウントの利用

「このパソコンはみんなで使うから、IDとパスワードはこれね」。そんな風に、部署やチームで一つのアカウントを共有していませんか。これは「共有アカウント利用」と呼ばれ、セキュリティ管理の観点からは非常に危険な行為です。

誰でも同じ情報でログインできる手軽さはありますが、その裏には大きな落とし穴が潜んでいます。もし問題が発生した際に、誰がその操作を行ったのか特定できず、原因究明が困難になってしまうのです。

なぜ共有アカウントは危険なのか?

共有アカウントの利用には、主に3つの大きなリスクが伴います。これらを理解し、適切な管理体制を築くことが求められます。

責任の所在が不明確になる

情報漏洩やデータの改ざんといったトラブルが発生した際、共有アカウントでは誰がいつ操作したのかを特定できません。その結果、適切な対応が遅れたり、組織内での不信感につながる恐れがあります。

退職者による不正アクセスのリスク

職員が退職した後も共有アカウントのパスワードが変更されていなければ、元職員はいつでも情報にアクセスできてしまいます。これは内部情報を不正に利用される深刻なリスクとなります。

パスワード漏洩の影響範囲が拡大する

共有アカウントを使う誰か一人が不注意でパスワードを漏らすと、そのアカウントを利用している全員が不正アクセスの危険にさらされます。影響範囲が広く、被害が大きくなる傾向があります。

データの持ち出しは慎重に!USBメモリの思わぬリスク

業務データを自宅に持ち帰って作業するため、あるいは他の職員とデータを共有するために、私物のUSBメモリや外付けハードディスクを利用しているケースはないでしょうか。

手軽で便利な記録媒体ですが、その使用には「USBデータ漏洩リスク」が伴います。特に、事業所の許可なく私物のデバイスを使用することは、ウイルス感染や情報漏洩の温床となりやすく、絶対に避けなければなりません。

私物USBメモリが引き起こすトラブル

私物のUSBメモリを安易に利用すると、予期せぬトラブルを引き起こす可能性があります。例えば、持ち運び中に紛失したり、盗難に遭ったりした場合、中に保存されていた利用者さんの個人情報が丸ごと流出してしまうかもしれません。

また、自宅のパソコンがウイルスに感染していた場合、そのウイルスがUSBメモリを介して事業所のパソコンに広がり、システム全体に深刻な被害を及ぼす危険性もあります。

許可なく重要なデータを持ち出す行為そのものが、内部不正とみなされる可能性もあるのです。

安全なデータの取り扱いルール

  • 私物の外部記録媒体の禁止
    私物のUSBメモリや外付けHDDなどの外部記録媒体を、業務用パソコンに接続することを原則禁止します。
  • 利用時の条件
    業務で外部記録媒体を使用する必要がある場合は、必ず事業所が許可し、セキュリティ対策(ウイルスチェック、暗号化など)を施したものに限定します。
  • 安全な代替手段の利用
    データの受け渡しや共有には、USBメモリではなく、セキュリティが確保されたクラウドストレージやファイル共有サーバーの利用を検討することも有効な手段です。

リスクは端末の中だけじゃない!書類管理の基本を見直そう

福祉の現場ではデジタルだけでなく、紙の書類からも情報が漏れる危険があります。パソコンの対策をしていても、書類管理が甘ければ意味がありません。机の整理や不要な書類の廃棄方法を見直し、利用者さんの情報を守りましょう。

机の上を常にクリアに

個人情報が書かれた書類を机に放置すると、来客や外部の人に見られる恐れがあります。離席時や退勤時には必ず書類を片付け、鍵付きキャビネットに保管する習慣をつけましょう。これにより情報漏洩を防ぎ、業務の効率化にもつながります。

シュレッダーで確実に処理

メモや印刷ミスの紙でも、そのまま捨てれば情報漏洩の原因になります。不要な書類は必ずシュレッダーで処理してください。

特に、細かく裁断できる「マイクロカット方式」の機器を使うと安心です。正しく処理することで、ゴミ箱からの情報流出を防ぐことができます。

小さな意識が大きな安全へ!

セキュリティルールは、業務を面倒にするためのものではありません。それは、利用者さんの大切な情報を守り、働く職員自身を守り、そして事業所の信頼を守るための「お守り」のようなものです。

まずは一つでも構いません、今日から実践できることを見つけて、行動に移してみてください。そして、職場の仲間同士で声を掛け合い、定期的に研修の機会を設けるなど、事業所全体でセキュリティ意識を高めていくことが、より安全な環境づくりにつながります。

まとめ

福祉の現場では、パソコンの置きっぱなしや共有アカウント、USBの利用、書類管理の不備などから情報漏洩が起こる危険があります。利用者さんの個人情報を守ることは人権と尊厳を守ることにつながり、事業所の信頼にも直結します。

離席時のロック、強固なパスワード設定、私物USBの禁止、書類のシュレッダー処理など、日常の小さな意識と行動が大きな安全を生み出します。全員で意識を高め、安心できる環境を築くことが重要です。

あとがき

この記事を書きながら、改めて福祉の現場で情報を守ることの大切さを強く実感しました。日々の業務に追われる中で、つい後回しにしがちなセキュリティですが、その一瞬の油断が大きな被害につながることを改めて考えさせられました。

離席時のロックや書類の片付けといった小さな行動も、利用者さんの信頼や事業所の信用を守る力になります。大切なのは「自分は大丈夫」と思わず、全員が当事者意識を持って行動することだと感じました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました