福祉職員及び利用者が気をつけるべき見える化・物理セキュリティ

利用者
画像はイメージです

セキュリティ対策というと、ウイルス対策ソフトや難しいパスワード設定などを思い浮かべるかもしれません。しかし、実はもっと身近なところに、情報漏洩の危険が潜んでいます。この記事では「見える化セキュリティ」と「物理セキュリティ」という、誰の目にも見える部分の対策に焦点を当てます。福祉施設や事業所で、利用者さんも職員さんも安心して過ごせる環境を作るため、今日からできる具体的な取り組みを分かりやすく解説します。

「見える化セキュリティ」とは?身近に潜む危険

「見える化セキュリティ」とは、少し難しい言葉に聞こえるかもしれません。これは、目で見てわかる情報の管理に関する対策のことです。

例えば、机の上に置きっぱなしの個人情報が書かれた書類や、パソコンの画面に貼り付けたパスワードの付箋などが、これにあたります。

何気ない日常の光景ですが、これらは非常に危険な状態です。第三者がその情報をのぞき見たり、メモを取ったり、スマートフォンで写真を撮ったりすることが、簡単にできてしまいます。

また、ホワイトボードに書かれた利用者さんの予定や連絡先なども、重要な個人情報です。

こうした「見える」状態の情報は、悪意のある人にとっては宝の山です。不正利用されたり、外部に漏らされたりするリスクと常に隣り合わせなのです。うっかり情報を放置してしまうことが、大きなトラブルの引き金になることを知っておきましょう。

なぜ福祉施設で「見える化」リスクが高いのか?

画像はイメージです

福祉施設や就労継続支援事業所は、他のオフィスとは少し異なる環境です。利用者さんはもちろん、そのご家族、職員、見学者、実習生、外部の業者さんなど、毎日たくさんの人が出入りします。

人の出入りが多いということは、それだけ多くの人の目に情報が触れる機会があるということです。

また、施設で取り扱う情報は、利用者さんの氏名や住所、病歴や障がいの状況など、特に配慮が必要なデリケートな情報がほとんどです。

こうした情報が万が一漏洩してしまった場合、利用者さんが受ける精神的なダメージは計り知れません。施設全体の信用も失墜してしまいます。

日々の支援業務は非常に忙しく、丁寧な情報の取り扱いが後回しになってしまうこともあるかもしれません。「後で片付けよう」と机に置いた一枚の書類が、取り返しのつかない事態を招く可能性を、私たちは常に心に留めておく必要があるのです。

「物理セキュリティ」の基本!モノの管理を見直そう

「物理セキュリティ」とは、情報そのものではなく、情報が入っている「モノ」を物理的に守るための対策を指します。

具体的には、パソコン、タブレット、スマートフォン、USBメモリ、そして書類そのものなど、情報を記録している媒体(メディア)が対象となります。

例えば、鍵のかかっていない部屋にパソコンを置きっぱなしにして外出するのは、非常に危険です。パソコンごと盗まれてしまえば、中のデータは全て盗まれてしまいます。

また、個人情報が入ったUSBメモリを安易に机の引き出しに入れておくのも、紛失や盗難のリスクを高める行為です。

たとえパソコンにパスワードをかけていても、機器そのものが盗まれれば、時間をかけてパスワードを破られる可能性があります。情報の入り口である「モノ」をしっかり管理すること。

これが物理セキュリティの最も基本的な考え方であり、情報漏洩対策の土台となるのです。

利用者も職員も!今日からできる「見える化」対策

「見える化」のリスクを防ぐためには、利用者さん、職員さん一人ひとりの少しの心がけが大切になります。ここでは、誰でも今日からすぐに実践できる、具体的で簡単な対策を3つ紹介します。

これらの行動を習慣にすることで、施設全体の安全性を大きく向上させることができます。

机の上をきれいに保つ「クリアデスク」

クリアデスクとは、机の上に不要な物、特に情報が記載された書類などを放置しないという考え方です。これを徹底することで、情報ののぞき見や紛失のリスクを大幅に減らすことができます。

  • 席を離れる時や帰る時は、書類を必ず鍵付きのキャビネットや引き出しにしまう。
  • すぐに対応できない書類は、一時的に裏返して置くなど、内容が見えないように工夫する。
  • 業務で使ったメモなども、不要になったらシュレッダーで確実に処分する。

常に机の上を整理整頓する意識を持つことが、クリアデスクの第一歩です。

パスワードの適切な管理方法

パスワードは、あなたのアカウントを守るための「鍵」です。その鍵を、誰にでも見える場所に置いておくのは大変危険です。付箋に書いてディスプレイに貼る、メモ帳に書いて机に置くといった行為は、絶対にやめましょう。

  • パスワードは他人に推測されにくい、複雑なものを設定する。
  • パスワードは暗記することを基本とし、どうしても覚えられない場合は鍵付きの場所に保管する。
  • パスワードの使い回しは避け、サービスごとに異なるパスワードを設定する。

パスワードの適切な管理が、不正ログインを防ぐための重要な鍵となります。

画面ののぞき見(ショルダーハック)を防ぐ

パソコンの画面を後ろや横から盗み見る行為を「ショルダーハック(肩越しののぞき見)」と言います。個人情報やパスワード入力画面を見られないよう、対策を講じることが大切です。

  • 少しでも席を離れる際は、必ずパソコンをロックする習慣をつける。
    (Windowsキー + L が便利です)
  • 画面にプライバシーフィルターを貼ることで、斜めからののぞき見を物理的に防ぐ。
  • ディスプレイの向きを工夫し、背後から画面が見えにくい位置に設置する。

自分の画面は常に見られているかもしれない、という意識を持つことが大切です。

事業所として取り組むべき物理セキュリティ強化策

画像はイメージです

個人の心がけに加えて、事業所全体で物理的なセキュリティレベルを高めるための仕組み作りも不可欠です。建物や設備、機器の管理方法を見直し、情報が物理的に盗まれたり、壊されたりするリスクを低減させましょう。

ここでは、事業所が主体となって取り組むべき対策を3つ紹介します。

重要エリアへの入退室管理

施設内には、特に重要な情報を保管している場所があるはずです。例えば、利用者さんの個人情報ファイルが保管されている書庫や事務室、サーバールームなどが該当します。

こうしたエリアは、関係者以外がむやみに出入りできないように管理を徹底する必要があります。

  • ICカードやシリンダー錠を設置し、入室できる職員を限定する。
  • 誰がいつ入退室したのかを記録する管理簿を作成し、定期的に確認する。
  • 部外者が立ち入る際は、必ず職員が付き添うルールを設ける。

物理的なアクセス制限は、情報漏洩対策の基本中の基本です。

記録媒体(USBメモリ等)の管理ルール策定

手軽で便利なUSBメモリは、紛失や盗難による情報漏洩の原因になりやすい記録媒体です。そのため、事業所として厳格な管理ルールを策定し、運用することが求められます。私物のUSBメモリの安易な利用は、ウイルス感染のリスクも高めます。

  • 事業所が許可し、管理番号をつけたUSBメモリのみ使用を許可する。
  • 使用する際は、管理簿に「いつ、誰が、何のために」持ち出したかを記録する。
  • データの受け渡しは、USBメモリではなく、安全なファイル共有サービスを利用する。

利便性よりも安全性を優先したルール作りが重要です。

防犯カメラの設置と監視

防犯カメラの設置は、不審者の侵入や内部での不正行為に対する強力な抑止力となります。また、万が一、盗難などのインシデントが発生した際には、状況を把握し、犯人を特定するための重要な証拠となります。

  • 建物の出入り口、駐車場、事務室の入り口など、死角ができないように設置する。
  • 防犯カメラが作動中であることを示すステッカーを掲示し、抑止効果を高める。
  • 録画データは適切に管理し、閲覧権限を限定する。

利用者さんと職員の安全を守るための投資として、設置を検討する価値は高いでしょう。

ルールを守る文化を育むために大切なこと

セキュリティ対策はルールを作るだけでは不十分で、施設に関わる全員が当事者意識を持つことが大切です。ルールは縛りではなく、利用者さんや職員、事業所全体を守るための仕組みであるという共通認識を持ちましょう。

そのためには、なぜ必要なのかを丁寧に説明し、全員で共有する機会をつくることが欠かせません。一方的に守らせるのではなく、定期的な研修や日々のミーティングで事例を共有しながら理解を深めることが重要です。

全員で考え、全員で守るという意識が根付いたとき、セキュリティは本当に強くなります。

まとめ

画像はイメージです

この記事では、福祉施設やA型事業所で特に注意すべき「見える化セキュリティ」と「物理セキュリティ」について解説しました。

机上の書類や画面の付箋など身近な情報放置は漏洩リスクにつながり、またパソコンやUSBメモリといった機器の管理不足も危険です。日常の心がけと事業所全体のルールづくりを徹底し、全員で守る意識を持つことが安全な環境づくりの第一歩となります。

あとがき

この記事を書きながら、改めて「情報は目に見える形で放置されるだけでも大きなリスクになる」と強く感じました。机の上の書類やちょっとしたメモ、USBメモリ1つが重大な漏洩につながる可能性があります。

特に福祉施設では多くの人が出入りし、扱う情報も非常にデリケートです。そのため、職員も利用者も「自分ごと」として意識を持つことが重要だと痛感しました。ルールを形だけでなく文化として根付かせることで、安心できる環境を作れるのだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました