A型就労支援事業所では、実際の仕事を体験しながら社会で働く力を身につけていくことができます。この記事では、日々の業務を“ただの作業”で終わらせず、自分の成長につなげるための「ビジネスフレームワーク」の活用方法を、やさしくわかりやすくご紹介します。
A型就労支援ってどんなところ?
A型就労支援事業所は、障がいや体調面に不安がある方が、一般企業で働くことを目指して“就労機会の提供や訓練”できる場所です。雇用契約を結んだうえで働けるのが特徴で、最低賃金以上のお給料も支払われます。
ただ仕事をするだけではなく、「働きながら学べる」ことが大きなポイントです。
事業所では、軽作業や事務補助、清掃、製品づくりなど、さまざまな業務があります。それらは一見すると単純な作業に見えるかもしれませんが、実は一つひとつが「社会で求められる力」を身につける実践の場でもあるのです。
「仕事をこなす」から「学びに変える」視点へ
たとえば、作業を時間どおりに進める、報告や相談をする、チームで協力する、こうした行動はすべて、一般就労でも必要とされるビジネススキルにつながっています。
日々の仕事の中に「なぜこの作業をするのか」「どうすればもっとよくできるか」といった視点を加えることで、作業は「学び」へと変わっていきます。
A型支援での業務を成長のチャンスに変えるためには、ただ言われたことをやるだけでなく、少しずつでも“考えながら働く”意識を持つことが大切です。そこで活躍するのが、次章でご紹介する「ビジネスフレームワーク」です。
なぜビジネスフレームワークが役立つの?
お仕事の現場でなにかと重宝するビジネスフレームワーク。それはどういったものなのか、見ていきましょう。
フレームワークってなに?
「ビジネスフレームワーク」と聞くと、少し難しそうに感じるかもしれませんが、実はとても身近なものです。フレームワークとは、「考え方の型」のようなもので、仕事を整理して考えやすくする道具のような存在です。
たとえば、「PDCAサイクル」や「5W1H」は、企業の現場でもよく使われているフレームワークです。それぞれどういったものなのか、具体的な部分は後の章で説明します。
型があると、仕事に自信が持てる
仕事を進める中で、「どう報告したらいいかわからない」「何から手をつければいいの?」と迷う場面は少なくありません。そんなとき、こうした“型”があると、自然と考える道筋ができ、行動にも自信が持てるようになります。
A型就労支援でも、このフレームワークを意識することで、業務への理解が深まり、ただ作業をこなすのではなく「なぜこうするのか」「どうすればもっと良くなるか」を考える力が育ちます。
それは、一般就労を目指すうえでもとても大きな力となるでしょう。
まずはここから!A型支援の現場で活用できる基本の型
お仕事に携わる際にはまず身につけておきたいのが「5W1H」という考え方。それはどういったものなのか、見ていきましょう。
伝える力を伸ばす5W1H
A型事業所での仕事では、報告や相談、連絡といった“報連相”がとても大切になります。このときに役立つのが「5W1H」という考え方です。
「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」この6つの視点をもとに伝えると、情報が整理され、相手にわかりやすく伝わります。
たとえば、「今日の作業で、〇〇さんが、10時ごろ、作業室で、ラベル貼りをしているときに、台紙が足りなくなったので中断しました」と伝えると、状況がはっきりと伝わりますよね。
これが、ただ「作業止まりました」だけでは、何があったのかよくわかりません。
報連相が自然と身につく環境
こうした報告の仕方は、業務メモや日報を書くときにも使えます。5W1Hを意識して文章をまとめることで、自然と「伝える力」が磨かれていくのです。
この力は、一般就労でもとても重要です。職場では、自分の状況や作業の進み具合を正しく伝えることが求められます。A型事業所での報連相(報告・連絡・相談)は、その練習にもなっているのです。
まずは日々のやりとりやメモの中で、5W1Hをちょっと意識してみましょう。身近な業務から始めることで、フレームワークを実践する力が、無理なく身についていきます。
ステップアップしたい人におすすめ!PDCAを意識した働き方
作業改善に役立つのが「PDCA」という考え方。これを日頃の業務に取り入れれば。さらなるレベルアップが見込めるでしょう。
PDCA(計画→実行→確認→改善)の基本と意味
「PDCAサイクル」という言葉を聞いたことがありますか?これは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、仕事を効率よく進めるための考え方です。
たとえば「明日までに資料を完成させる」という目標を立てたら、それを実行し、うまくいったかを確認し、もっと良くできる方法を考えて次に活かす――これがPDCAの流れです。
「ただ言われた作業をこなす」から「工夫して改善できる人」になる
A型支援での業務では、どうしても「与えられた作業をこなす」ことに意識が向きがち。
ですが、そこから一歩踏み出して、「もっと効率よくできる方法はないかな?」「前回よりうまくやるにはどうする?」と考えてみるだけでも、仕事への取り組み方が変わってきます。
こうした小さな“改善の視点”を持てるようになると、職場での評価も変わってきます。「この人はちゃんと考えて仕事をしているな」と感じてもらえるようになるのです。
つまり、PDCAを意識した働き方は、ただの作業を「主体的な仕事」へと変えていく一歩になります。
ちょっと差がつく!「なぜ?」を考えるロジカル思考のすすめ
仕事の場面で、「どうしてこの作業が必要なんだろう?」「なぜこうすると早く終わるんだろう?」と考えることがありますよね。そうした疑問を大切にすることで、「ロジカル思考=筋道を立てて物事を考える力」が育っていきます。
ロジカル思考=「順序立てて、わかりやすく説明する力」
ロジカル思考は、ただ難しい言葉を使うことではありません。ポイントは、物事を順序よく整理して「わかりやすく伝える」ことにあります。
たとえば、「急いでいたから手順を変えたけど、結果的に作業が早く終わった」といったふうに、理由と結果をしっかり説明できると、周囲の信頼を得やすくなります。
なぜこの作業をするのか?なぜこうすれば早くなるのか?を考えてみよう
業務の中で「なぜ?」を考えるクセをつけると、ただの作業に意味が生まれ、自分の中の納得感も深まります。そしてその思考力は、一般就労で求められる「説明力」や「理解力」にもつながっていきます。
考える力がある人は、仕事を任される場面が増え、信頼されやすくなります。まずは日々のちょっとした疑問から、「なぜ?」を意識してみましょう。
働きながら成長するために大切な姿勢
業務に取り入れることで自分の成長にも繋げられるビジネスフレームワーク。それをどういった姿勢で扱っていけばいいのか、見ていきましょう。
フレームワークは“完璧に使うこと”より“意識してみること”が大切
ここまでいくつかのビジネスフレームワークをご紹介してきましたが、大切なのは「完璧に使えるか」ではなく、「ちょっとでも意識してみること」です。
最初から上手くできなくて当たり前。大事なのは、「まずやってみる→振り返る→また試す」という小さなサイクルを積み重ねることです。
支援員とのコミュニケーションも活用して学びを深めよう
業務で迷ったときや、どう改善したらいいか悩んだときには、ぜひ支援員さんに相談してみてください。
フレームワークの使い方や振り返り方など、一緒に考えることで新しい視点が得られることもあります。
成長する人の共通点=小さな気づきや改善を楽しめる人
「もっと良くできた」「次はこうしてみよう」と思える人は、自然と成長していきます。完璧じゃなくても、「気づき」を前向きに受け止めて動いていける人は、確実に力を伸ばしていけるのです。
一般就労は、ゴールではなく通過点のひとつ。いま積み重ねている小さな成長が、あなたの未来を支える大きな力になっていきます。
まとめ
A型就労支援の仕事は、ビジネスフレームワークを意識することで「学び」の場に変わります。5W1HやPDCA、ロジカル思考などを日々の業務に少しずつ取り入れていくことで、自然と考える力が身につき、一般就労に向けた自信と実力が育っていきます。
あとがき
ビジネスフレームワークは、お仕事の場面だけで活用できるものではありません。もっと広範に、様々な場面で活用することが可能です。加えて、フレームワークの種類においても、本記事でご紹介したものだけでなく、数限りなく存在します。
中には、個人的にフレームワークを作り出したという方もいらっしゃいます。
このような幅広いビジネスフレームワークの世界に皆さんも飛び込んでみて、身分に合ったベストな方法を探索、もしくは自作してみてはいかがでしょうか?
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