福祉の現場でもパソコンやスマートフォンを使う機会は、ますます増えています。業務の効率化や利用者さんとのコミュニケーションに役立つ一方、気をつけなければならないのがセキュリティの脅威です。この記事では、福祉施設の職員や利用者の皆さんが、安心してデジタル機器やサービスを利用できるよう、注意すべきセキュリティ攻撃とその対策を分かりやすく解説します。自分や大切な利用者の情報を守るための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
福祉の現場でなぜセキュリティ対策が必要なのか?
福祉施設では、利用者さんの氏名や住所、連絡先はもちろんのこと、病歴や障がいの状況といった、非常に重要な個人情報を多く取り扱っています。
これらの情報が万が一、外部に漏れてしまったら、詐欺や嫌がらせに悪用されるなど、利用者さんに大きな被害が及ぶ可能性があります。そのため、情報を管理する職員は細心の注意を払わなければなりません。
また、脅威は施設の外部からだけでなく、職員や利用者さん自身が使うパソコンやスマートフォンを通じて忍び寄ることもあります。
例えば、普段使っているメールやSMSに偽のメッセージが届き、気づかないうちに情報を盗まれてしまうケースも少なくありません。
福祉の現場に関わる全ての人が、デジタル社会に潜む危険性を正しく理解し、日頃から対策を意識することが、安心してサービスを提供し、利用できる環境づくりに繋がるのです。
SMSに潜む罠「フィッシングSMS」とは?
フィッシングSMSは「スミッシング」とも呼ばれ、スマートフォンに届くショートメッセージサービス(SMS)を利用した詐欺の手口です。
宅配業者や、利用しているオンラインサービス、公的機関などを装い「荷物をお届けしましたが不在でした」「アカウントがロックされました」「給付金のお知らせ」といった、もっともらしい内容のメッセージを送ってきます。
そして、メッセージに記載されたURLをクリックさせ、本物そっくりの偽サイトに誘導するのです。
もし、その偽サイトでIDやパスワード、クレジットカード番号などの個人情報を入力してしまうと、その情報が盗まれ、不正利用されてしまいます。
非常に巧妙化しており、一見しただけでは偽物だと見抜くのが難しい場合も多いため、十分な注意が必要です。
安易にURLをタップしない
知らない番号や、少しでも怪しいと感じるSMSに記載されているURLは、絶対にタップしないようにしましょう。もし宅配便の不在通知などであれば、公式のアプリや、自分でブックマークしておいた公式サイトからアクセスして状況を確認するのが安全です。
メッセージ内のURLからアクセスする癖をなくすことが、被害を防ぐための重要な第一歩となります。
IDやパスワードを安易に入力しない
万が一URLをタップしてサイトが表示されたとしても、すぐにIDやパスワード、個人情報を入力してはいけません。本物のサイトと見比べて、URLの文字列(ドメイン名)が少しだけ違っていないかなどを確認しましょう。
少しでも違和感があれば、それは偽サイトの可能性が高いです。焦らず、一度画面を閉じて冷静に対処することが大切です。
二段階認証を設定する
多くのウェブサービスでは、IDとパスワードによるログインに加えて、スマートフォンに送られる確認コードの入力を求める「二段階認証」というセキュリティ機能が用意されています。
これを設定しておけば、万が一パスワードが盗まれてしまっても、第三者が不正にログインすることを防ぐことができます。少し手間はかかりますが、安全性を高めるために積極的に設定しましょう。
電話口の詐欺「音声フィッシング(ビッシング)」
音声フィッシングは「ビッシング」とも呼ばれ、電話を利用して個人情報をだまし取ろうとする詐欺です。犯人は、銀行員や市役所の職員、警察官などを名乗り、言葉巧みにあなたを信用させようとします。
「医療費の還付金があります」「あなたの口座が不正に利用されています」といった、緊急性やお得感を煽るような内容で、冷静な判断力を失わせようとするのが特徴です。
そして、手続きに必要だと偽って、口座番号や暗証番号、マイナンバー、クレジットカードの情報などを聞き出そうとします。また、ATMに行くよう指示し、巧みな話術で犯人の口座にお金を振り込ませる「還付金詐欺」も、このビッシングの一種です。
電話という声だけのコミュニケーションでは、相手の正体を確認するのが難しいため、特に注意が必要です。
知らない番号からの電話には注意
普段かかってくることのない、知らない番号からの電話には警戒しましょう。すぐに出る必要はありません。留守番電話に設定しておくか、一度電話を切り、その電話番号をインターネットで検索してみるのも有効な対策です。
詐欺に使われた番号であれば、他の被害者からの注意喚起が見つかることもあります。
その場で個人情報を伝えない
電話口で口座番号や暗証番号などを聞かれても、絶対に教えてはいけません。覚えておいてほしいのは、公的機関や金融機関の職員が、電話で暗証番号のような重要な情報を尋ねることは絶対にないということです。
「確認のため」と言われても、「後でかけ直します」と伝えて一度電話を切りましょう。そして、必ず自分で調べた公式サイトなどに載っている正規の電話番号にかけ直して、事実確認をしてください。
家族や同僚に相談する
「お得な話かもしれない」「大変なことになった」と感じて焦ってしまうと、正常な判断が難しくなります。
電話の内容に少しでも疑問を感じたら、一人で決めずに、すぐに家族や職場の信頼できる同僚に相談しましょう。第三者に話すことで冷静さを取り戻し、詐欺であることに気づける可能性が格段に高まります。
ウェブサイト閲覧時の注意点「クロスサイトスクリプティング」
クロスサイトスクリプティングは、利用者さんがウェブサイトを閲覧する際に被害に遭う可能性がある攻撃です。この攻撃は、ウェブサイト自体にセキュリティ上の弱点(脆弱性)がある場合に発生します。
攻撃者は、多くの人が利用する掲示板やブログのコメント欄などに、悪意のあるプログラム(スクリプト)を書き込みます。そして、他の利用者さんがそのページを閲覧すると、埋め込まれたスクリプトがブラウザ上で自動的に実行されてしまうのです。
このスクリプトが実行されると、ログイン情報を保存しているCookie情報などが盗まれ、アカウントを乗っ取られてしまう可能性があります。
また、偽の入力フォームが表示され、そこに入力した個人情報が盗まれたり、全く別の悪意のあるサイトに強制的に移動させられたりすることもあります。
利用者側で直接防ぐのは難しい攻撃ですが、このような危険があるという知識を持っておくことが大切です。
信頼できないサイトの利用を避ける
インターネットを閲覧する際は、運営元がはっきりしないサイトや、不審な広告が多数表示されるサイトの利用は避けましょう。
特に、個人情報を入力する画面では、URLの冒頭が「https://」で始まっていることを確認する習慣をつけてください。これは、通信が暗号化されており、安全性が高いことを示しています。
ブラウザや拡張機能を最新に保つ
Google ChromeやMicrosoft Edgeといったウェブブラウザは、セキュリティ向上のために日々アップデートされています。
常に最新のバージョンを利用することで、クロスサイトスクリプティングを含む様々な攻撃から身を守る機能が強化されます。特別な理由がない限り、ブラウザの自動更新は有効にしておきましょう。
まとめ
この記事では、福祉施設で増えるパソコンやスマートフォン利用に潜むセキュリティ脅威について解説しました。
SMSを悪用したフィッシングや電話を使うビッシング、さらにウェブサイトの脆弱性を突くクロスサイトスクリプティングなど、身近に潜む手口は多様です。
怪しいURLを開かない、電話で個人情報を伝えない、信頼できないサイトを避ける、そしてブラウザを常に最新に保つことが被害を防ぐ第一歩です。
あとがき
この記事を書きながら、福祉の現場でもデジタル化が進む一方で、日常的に潜むセキュリティ脅威が非常に身近な存在であることを改めて実感しました。
フィッシングSMSや音声フィッシングは一見すると巧妙で、誰でも騙されてしまう可能性がありますし、クロスサイトスクリプティングのような専門的な攻撃も、被害を受ける側からすると突然で避けにくいものです。
だからこそ、現場の職員や利用者が「知識を持つこと」自体が最大の防御になるのだと強く感じました。
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