福祉職員及び利用者が気をつけるべきセキュリティ脅威・攻撃手法4

福祉施設は、大切な個人情報を多く扱うため、サイバー攻撃の標的になる危険性があります。悪意のある攻撃者は、職員や利用者の心の隙を巧みに突いてきます。しかし、どのような脅威があるのかを知り、基本的な対策を理解することで、被害を未然に防ぐことは可能です。この記事では、A型就労継続支援事業所などの福祉施設で働く職員や利用者が、特に気をつけるべきセキュリティの脅威と、その攻撃手法について分かりやすく解説します。皆で知識を共有し、安全な環境を守りましょう。

なぜ福祉施設でセキュリティ対策が重要なのか

福祉施設には、利用者の方々の氏名や住所、連絡先はもちろんのこと、病歴や障がいの詳細といった、非常に重要な個人情報が数多く保管されています。

これらの情報が万が一外部に漏れてしまえば、悪用される危険性があり、利用者の方々に多大なご迷惑と不安を与えてしまいます。また、施設の運営に関わる重要なデータが盗まれたり、破壊されたりすれば、サービスの提供が困難になる事態も考えられます。

サイバー攻撃の目的は、金銭だけではありません。施設の業務を妨害し、社会的な信用を失墜させることも目的なのです。近年では、施設のパソコンを利用者の方が訓練などで使用する機会も増えています。

そのため、職員だけでなく、利用者一人ひとりがセキュリティに関する正しい知識を持つことが、施設全体を脅威から守る上で不可欠となっているのです。

身代金を要求する脅威!ランサムDDoS攻撃とは?

ランサムDDoS攻撃とは、ウェブサイトやサーバーに対して、大量のアクセスやデータを送りつけることでサービスを停止させる「DDoS攻撃」と、身代金を意味する「ランサム」を組み合わせた悪質な攻撃手法です。

攻撃者はまず、標的となる福祉施設のホームページなどにDDoS攻撃を仕掛け、閲覧できない状態に陥らせます。そして、「攻撃をやめてほしければ金銭を支払え」と、脅迫してくるのです。

施設のホームページは、外部への情報発信や、利用者家族との大切な連絡手段です。これが機能しなくなると、必要な情報が伝えられなくなり、業務に大きな支障をきたします。

また、攻撃を受けているという事実自体が、施設の信頼性を大きく損なうことにも繋がります。この攻撃の厄介な点は、攻撃の予告をしてきて、少額の金銭を要求し、支払うとさらに高額な要求を突きつけてくるケースがあることです。

請求書に偽装?メール添付型マルウェアの手口

マルウェアとは、利用者のパソコンに不利益をもたらす目的で作成された、悪意のあるソフトウェアやコードの総称です。その中でも「メール添付型マルウェア」は、最も古典的でありながら、今なお被害が絶えない攻撃手法の一つです。

攻撃者は、取引先や関係者を装い、業務に関係がありそうな件名のメールを送ってきます。例えば、「請求書のご送付」「お見積もりの件」「新規利用希望者の履歴書」といった、思わず開いてしまいそうな件名が使われます。

そして、そのメールにはウイルスが仕込まれたファイルが添付されているのです。このファイルを開いてしまうと、パソコンがマルウェアに感染してしまいます。

パソコン内の情報を盗み出す

感染すると、パソコンに保存されているIDやパスワード、個人情報などが盗み出され、不正に利用される危険があります。特に、福祉施設が管理する多数の利用者情報が流出すれば、その被害は甚大なものになります。

遠隔操作の踏み台にされる

マルウェアの中には、感染したパソコンを外部から操れるようにしてしまうものもあります。そうなると、自分のパソコンが、他の施設や企業への攻撃の踏み台として悪用されてしまう可能性があり、知らず知らずのうちに加害者になってしまうのです。

心当たりのないメールには注意

対策の基本は、心当たりのない送信元からのメールや、件名に不審な点があるメールは、安易に開かないことです。添付ファイルがある場合は、開く前に送信元に電話などで確認する習慣をつけることが大切です。

「更新が必要です」は罠!偽アップデート攻撃に注意

パソコンでインターネットを閲覧していると、突然「お使いのソフトウェアは古くなっています」「ウイルスを検出しました」「今すぐ更新してください」といった警告メッセージが表示されることがあります。

これが「偽アップデート攻撃」または「フェイクアラート」と呼ばれる手口です。これらの表示は、利用者の不安を煽り、慌てて偽の更新プログラムや駆除ソフトをインストールさせることが目的です。

もし、画面の指示に従ってボタンをクリックし、ファイルをダウンロード・実行してしまうと、マルウェアに感染したり、高額な請求をされるサポート詐欺に誘導されたりします。

ソフトウェアの更新は、セキュリティを保つ上で非常に重要ですが、正しい手順で行う必要があります。

表示された警告を鵜呑みにしない

ブラウザに表示される警告は、偽物である可能性が高いと疑いましょう。特に、警告音と共に派手なデザインで危険を知らせてくるものは要注意です。慌ててクリックせず、まずはその画面を閉じることを考えましょう。

更新は公式サイトから行う

ソフトウェアのアップデートは、提供元の公式サイトや、ソフトウェア自体の正規のアップデート機能を通じて行うのが鉄則です。ウェブサイトの広告やポップアップから更新することは、絶対に避けてください。

A型就労継続支援事業所でできる具体的な対策

A型就労継続支援事業所のような場所では、職員と利用者が一体となってセキュリティ意識を高めることが、何よりも効果的な対策となります。

まず職員は、定期的にセキュリティに関する研修を受け、最新の攻撃手口や対策についての知識を常にアップデートしておく必要があります。

また、パソコンやシステムのパスワードは、誕生日などの安易なものを避け、英字の大文字・小文字、数字、記号を組み合わせた複雑なものに設定するルールを徹底しましょう。

利用者の方々がパソコン訓練などを行う際には、セキュリティについても学ぶ機会を設けることが重要です。

例えば、「怪しいメールが届いたら、すぐに職員に相談する」「知らない人からのメッセージに記載されたURLはクリックしない」といった、具体的なルールを分かりやすく伝え、日頃から相談しやすい雰囲気を作っておくことが、被害の未然防止に繋がります。

重要なデータは、定期的に外付けハードディスクやクラウドストレージなどにバックアップを取っておくことも忘れてはいけません。

もし被害に遭ってしまったら?落ち着いて対処する方法

どれだけ気をつけていても、サイバー攻撃の被害に遭ってしまう可能性はゼロではありません。万が一、マルウェアへの感染が疑われたり、不正なアクセスに気づいたりした場合は、パニックにならずに落ち着いて行動することが最も重要です。

まず、被害の拡大を防ぐために、感染が疑われるパソコンをすぐにネットワークから切り離しましょう。有線LANであればケーブルを抜き、無線LAN(Wi-Fi)であれば接続をオフにします。次に、速やかに施設の管理者や上長に事実を報告し、指示を仰ぎます。

自分の判断で解決しようとすると、かえって状況を悪化させてしまう恐れがあるためです。その後、業務用システムや各種オンラインサービスで使用しているパスワードを、他の安全なパソコンから変更します。

必要に応じて、警察のサイバー犯罪相談窓口や、情報処理推進機構(IPA)などの専門機関に相談することも検討しましょう。被害の事実を隠さず、正直に報告し、組織全体で対応することが、信頼回復への第一歩となります。

まとめ

福祉施設では大切な個人情報を扱うため、ランサムDDoSやマルウェア、偽アップデート攻撃など多様な脅威に狙われやすいです。職員と利用者が共にセキュリティ意識を高め、研修やルールの徹底、バックアップの実施が欠かせません。

万が一被害に遭った場合は、端末をすぐにネットワークから切り離し、管理者へ報告し、専門機関に相談することで被害拡大を防ぎ、信頼回復につなげることが重要です。

あとがき

この記事を書きながら、福祉施設が直面するセキュリティ脅威の多さと、その深刻さを改めて実感しました。ランサムDDoSや偽メール、偽アップデートといった手口は巧妙で、日々の業務に追われる現場では見落としやすいと感じます。

しかし、職員と利用者が一緒になって学び合い、小さな習慣から対策を徹底することが、被害を防ぐ大きな力になると確信しました。情報共有と意識向上こそ最大の防御だと強く思います。

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