福祉職員及び利用者が気をつけるべきセキュリティ脅威・攻撃手法2

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福祉の現場でも、パソコンやインターネットは欠かせないツールになりました。しかし、その便利さの裏にはサイバー攻撃という危険が潜んでいます。この記事では、福祉施設の職員や利用者の皆さんが知っておくべきセキュリティの脅威として、三つの攻撃手法を分かりやすく解説します。「総当たり攻撃」「辞書攻撃」「水飲み場型攻撃」です。どのような手口で情報を盗もうとするのかを知ることが、皆さん自身と、施設が持つ大切な情報を守る第一歩になります。

総当たり攻撃とは?力ずくで行われるパスワード解読

総当たり攻撃とは、パスワードを解読するために考えられる全ての文字列の組み合わせを力ずくで試す方法です。

例えば4桁の数字のパスワードであれば、「0000」から「9999」までを順番に全て試すといった仕組みです。福祉施設が持つ個人情報は、悪用されると大きな被害をもたらすため、攻撃者にとって狙いやすい標的となる危険性があります。

パスワードの複雑さで防ぐ

パスワードはできるだけ長く、かつ複雑に設定することが重要です。英大文字、英小文字、数字、記号を組み合わせることで、攻撃者が試さなければならない組み合わせが飛躍的に増え、解読が困難になります。

アカウントロック機能の活用

多くのウェブサービスには、パスワードを一定回数間違えると一時的にアカウントをロックする機能があります。この仕組みを有効にすることで、連続してログインを試みる総当たり攻撃を未然に防ぐことができます。

多要素認証で二重の防御

パスワードに加えて、スマートフォンに送られる確認コードなどを用いる「多要素認証(MFA)」を導入することも有効です。万が一パスワードが突破されても、第二の認証要素で不正ログインを防ぐことができます。

辞書攻撃とは?辞書を利用した効率的なパスワード突破

辞書攻撃は、総当たり攻撃と似ていますが、より効率的な方法です。辞書に載っている単語や、よく使われるパスワードのリスト(辞書ファイル)を利用してパスワードを試す仕組みになっています。

攻撃者は、一般的な英単語や人名、地名だけでなく、過去に他のサービスから漏洩したパスワードリストを活用することもあります。意味のある単語や単純な文字列をパスワードに設定していると、短時間で突破されてしまう危険性が高まります。

辞書にある単語を避ける

「password」や「12345678」など単純な文字列はもちろん、「apple」「tokyo」のように辞書に載っている単語をそのまま使うのは危険です。これらは攻撃者が最初に試す対象と考えられます。

個人情報を使わない

自分や家族の名前、ペットの名前、誕生日、電話番号など推測されやすい情報をパスワードに含めるのは避けるべきです。SNSから情報を収集してパスワードを推測する攻撃者も存在します。

使い回しをやめる

異なるサービスで同じパスワードを使い回すと、一つのサービスから漏洩しただけで他の全てのサービスに不正ログインされる危険があります。面倒でもサービスごとに異なるパスワードを設定することが大切です。

水飲み場型攻撃の恐怖|信頼しているサイトが牙をむく

水飲み場型攻撃は、攻撃の標的となる組織や個人が、頻繁に訪れるウェブサイトを事前に改ざんしておく攻撃手法です。そして、標的がそのサイトにアクセスした際に、ウイルスなどを仕込んだ不正なプログラムを自動的にダウンロードさせて感染させます。

この名称は、肉食動物が水飲み場に集まる草食動物を待ち伏せして襲う様子に由来しています。普段から利用している信頼できるサイトが攻撃の踏み台にされるため、利用者は気づかずに被害に遭ってしまうことが多いのが特徴です。

福祉関係の職員であれば、業界団体のホームページや、利用している業務システムの公式サイトなどが標的になる可能性があります。

水飲み場型攻撃の流れと対策

この攻撃は、まず攻撃者が標的の行動を調査することから始まります。福祉施設の職員がよく見るサイトを特定し、そのサイトのセキュリティ上の弱点(脆弱性)を見つけ出して侵入し、不正なコードを埋め込みます。

そして、何も知らない職員がそのサイトを閲覧しただけで、パソコンがウイルスに感染してしまうのです。対策としては、OSやブラウザ、セキュリティソフトを常に最新の状態に保ち、脆弱性をなくしておくことが非常に重要です。

なぜ福祉施設がサイバー攻撃の標的になるのか

福祉施設がサイバー攻撃の標的になる理由。それは、非常に機微な個人情報を大量に保有しているからです。

例えば、A型就労継続支援事業所などでは、利用者さんやそのご家族の氏名、住所、連絡先はもちろん、病歴や障がいの詳細といった情報も管理しています。

これらの情報は、一度漏洩すると悪用されやすく、金銭を要求するランサムウェア攻撃の標的になったり、詐欺などに使われたりする危険性があります。

また、一般企業と比較してセキュリティ対策が手薄であると見なされ、攻撃者から狙われやすい傾向があることも残念ながら事実です。

情報漏洩がもたらす深刻なリスク

もし施設から個人情報が漏洩してしまった場合、その影響は計り知れません。まず、被害に遭われた利用者さんやご家族に多大な迷惑と不安を与えてしまいます。さらに、施設の社会的信用は大きく損なわれ、運営そのものに影響が出る可能性も否定できません。

監督官庁への報告や、利用者への説明、再発防止策の策定など、事後対応にも膨大な時間とコストがかかります。情報を守ることは、利用者さんとの信頼関係を守ること、そして施設の安定した運営を守ることに直結するのです。

福祉職員が実践できる日常のセキュリティ対策

サイバー攻撃というと専門的で難しい印象を持つかもしれませんが、日々の業務の中で意識することで防げる脅威は多くあります。ここでは福祉施設の職員として、今日からすぐに実践できるセキュリティ対策を紹介します。

特別な知識は必要ありません。小さな積み重ねが、施設全体を守る大きな力になります。まずは自分自身のパソコンやアカウント管理から見直してみましょう。

パスワードを正しく管理する

多くの複雑なパスワードを覚えるのは大変ですが、その場合はパスワード管理ツールを活用する方法があります。安全なツールを選べば、複雑なパスワードを自動生成し、安全に保管してくれます。

ソフトウェアを常に最新に保つ

パソコンのOSやソフトウェア、ブラウザなどから届く「アップデートしてください」という通知は後回しにせず、速やかに実行しましょう。アップデートには発見された脆弱性を修正するための重要なプログラムが含まれています。

更新を怠ることは攻撃者に侵入の扉を開けているようなものです。特に水飲み場型攻撃はサイトだけでなく閲覧者側の脆弱性を狙うため、常に最新の状態を保つことが最も効果的な防御策の一つです。

利用者と共に進めるセキュリティ意識の向上

施設のセキュリティレベルを高めるためには、職員だけでなく、パソコンを利用する利用者さんの協力が欠かせません。特にA型就労継続支援事業所などでPC作業を行う利用者さんも、サイバー攻撃のリスクに直面する当事者の一人です。

職員が一方的にルールを押し付けるのではなく、なぜ対策が必要なのかを丁寧に説明し、一緒に取り組む姿勢を持つことが大切です。施設全体で力を合わせ、安全で安心できるインターネット利用環境を築いていきましょう。

分かりやすい情報提供

セキュリティの話は専門用語が多くなりがちです。そのため「怪しいメールは開かない」「パスワードは使い回さない」といった具体的で簡単な言葉で伝える工夫が必要です。

朝礼での短い声かけや休憩室へのポスター掲示など、繰り返し伝えることで意識を定着させることができます。

相談しやすい環境づくり

「変なサイトを開いてしまったかもしれない」「知らないメールの添付ファイルをクリックしてしまった」といった状況が起きたとき、隠さずにすぐ職員へ相談できる雰囲気を整えることが重要です。

叱責するのではなく、報告してくれたことに感謝し、迅速に対応することで被害拡大を防ぐことができます。

まとめ

福祉施設では個人情報を多く扱うためサイバー攻撃の標的になりやすく、「総当たり攻撃」「辞書攻撃」「水飲み場型攻撃」といった脅威への理解と対策が不可欠です。

パスワードの複雑化や多要素認証、ソフトウェア更新、相談しやすい環境づくりなど、日常の小さな工夫が被害を防ぎます。職員だけでなく利用者も一緒に意識を高め、安全な環境を守ることが施設全体の信頼と安心につながります。

あとがき

この記事を書きながら、福祉施設が抱えるセキュリティリスクは想像以上に深刻であり、現場の一人ひとりが意識を高めることの大切さを改めて感じました。

日常の小さな習慣や声かけが積み重なることで、施設全体を守る大きな力につながることを実感し、このテーマを伝える意義を強く感じています。

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