A型就労支援×動物・農業の魅力

利用者
画像はイメージです

「無理なく、自分らしく働きたい」──そんな思いに応えるA型就労支援施設が、全国に少しずつ広がっています。中でも、自然とふれあいながら心と体を整えて働ける場として注目されているのが、動物や農業に関わる事業所です。本記事では、「さんさん牧場」と「多機能型施設コッコ」という二つの施設を通して、動物・農業と関連する支援の魅力を紹介します。

自然の中で働くという選択

人が多く集まる場所や、スピードを求められる仕事に疲れてしまった方にとって、静かな環境での作業は心を癒やす特効薬になるかもしれません。動物の世話や畑仕事などは、時間に追われることが少なく、自分のペースでじっくり取り組めるのが大きな魅力です。

自然の中での仕事は、季節や天候に合わせて日々移り変わっていきます。春には苗を植え、夏は草を刈り、秋には収穫、冬には雪かきと、四季それぞれの作業が日常に彩りを添えてくれるでしょう。

こうした自然のリズムとともに働くことで、生活リズムも整いやすくなり、毎日にメリハリが生まれます。

また、動物や植物と向き合う時間は、言葉に頼らないコミュニケーションの時間でもあります。特に人との関わりに不安を感じる方にとって、「ただそばにいるだけで安心できる存在」が近くにいることは、大きな支えになるでしょう。

動物の世話は繊細で根気がいる仕事ですが、その分だけ信頼関係も生まれやすく、心を通わせる喜びを感じられます。

こうした環境の中で、「働くことって意外と悪くないかも」と少しずつ感じられるようになる方も少なくありません。では具体的に、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

動物と暮らす「さんさん牧場」

画像はイメージです

「いつでも、だれにも、等しく陽のあたる場所を。」という思いを込めて名付けられた「さんさん牧場」は、全国的にも珍しい馬にかかわるA型就労支援事業所です。

ここでは、障がいのある方が自立と社会参加を目指し、自分らしい暮らしができる環境づくりを第一に支援しています。利用者一人ひとりの特性や状況に応じて作業を調整し、無理のない範囲で働ける体制が整っています。

さんさん牧場は、一般企業での就労が難しい障がい者の方に対し、生産活動やさまざまな作業を通して知識や能力を高める訓練を提供しています。多くの方が一般就労へ向けたステップアップの場として働いています。

仕事内容は多岐にわたり、主には馬体のブラッシング、エサやり、水やり、健康管理、厩舎や馬房の清掃、馬具の点検や清掃などがあります。動物たちの生活を支える作業は、日々の繊細な観察力と責任感が求められます。

加えて、乗馬補助や来客対応といった人とのコミュニケーションを含む業務もあるため、対人スキルを少しずつ育むこともできます。

農作業も大切な仕事の一つで、畑やハウスで育てる農作物の管理から収穫、さらには販売まで携わります。近隣施設からの委託作業として病棟のシーツ交換や洗車、トイレ清掃なども担当し、実務経験を積みながら多様な作業に挑戦できます。

ある日のスケジュールは、午前10時のミーティングから始まり、厩舎作業や環境整備に取り組みます。昼休みをはさんで午後も厩舎作業やシーツ交換などを行います。15時40分からは清掃作業や環境整備を行い、16時に終業します。

曜日によって作業内容が変わるため、毎日が単調にならず、利用者も飽きずに取り組める工夫がされているようです。

農業と生活支援の「多機能型施設コッコ」

「多機能型施設コッコ」は、動物の飼育と農産物の生産を通じて、障がい者の方々の就労継続支援A型およびB型のサービスを提供しています。地域の中で開かれた施設として、近隣住民との交流や販売活動も盛んに行われています。

例えば、校外学習による食育教育にも積極的に協力しており、子どもたちが食の大切さや地産地消の意義を学べる貴重な場を提供しています。

施設では、「働きたい」という気持ちを尊重し、「誰かに必要とされる喜び」、「それぞれの夢や目標」を大切にしています。

コッコでは、鶏舎の清掃や鶏の健康管理といった畜産業務を行っています。収穫した卵は洗卵し、丁寧にパック詰めして、地元の直売所で販売されています。

利用者は、作業だけでなく「自分たちの手で商品を世に送り出す」実感を得ることができます。

また、栽培、除草、収穫、袋詰め、配達まで、すべての工程に関わるため、達成感と責任感のある仕事を経験できます。

農作業や動物の世話を通して、利用者は少しずつ社会とのつながりを築き、自信を回復していきます。就労の場でありながら、「生きる力」を育む場所としての役割も果たしているのがコッコの魅力です。

動物・農業支援がもたらす多角的な効果

画像はイメージです

動物や農業に関わる仕事は、その特性から利用者に多様な恩恵をもたらします。まず、体を動かす作業が多く、草刈りや収穫といった具体的な成果が目に見えるため、高い達成感を得られるのが大きな特徴です。

自分が社会の一員として役立っているという実感は、利用者の自己肯定感を育み、働く喜びへとつながります。この目に見える成果は、日々のモチベーション維持にも不可欠です。

動物との触れ合いによる精神的な安定

動物との触れ合いは、利用者の精神的な安定に大きく貢献します。動物がもたらす安心感や癒やし効果は、科学的な研究によってもストレス軽減に役立つことが明らかになっています。

言葉では表現しにくい複雑な感情の変化も、動物がそばにいることで自然と和らぎ、心の平穏へと導かれます。これは、精神的な負担を抱える利用者にとって、日々の生活を送る上で非常に大きな支えとなります。

動物たちは、ありのままを受け入れてくれる存在として、利用者の心の拠り所となるでしょう。

自然の中での活動が促す生活リズムの改善

自然豊かな環境での仕事は、単に作業を行うだけでなく、生活リズムの劇的な改善にも深く関わっています。

毎朝、心地よい朝日を浴びながら体を動かし、自然の中で適度な疲労感を得ることは、その日の活動への意欲を高めるだけでなく、夜間の深い睡眠へと自然に繋がり、心身の調子を根本から整える効果が期待できます。

不規則な生活を送りがちな利用者にとって、自然に即した規則正しい生活リズムの確立は、健康維持の最も重要な基盤となります。このような日々の積み重ねは、身体的な健康だけでなく、精神的な安定をもたらして自己管理能力の向上にも寄与します。

この経験は、将来的に一般企業への就労を目指す上での適応力を高め、より自立した充実した生活を送るための、確かな土台を築くかけがえのないものとなるでしょう。

地域で育む、きらめく自信と社会性

地域の人々との交流も、利用者の社会復帰において極めて重要な要素です。生産物の販売や地域のイベントへの参加を通じて、利用者は「自分が社会に貢献できている」という実感を得る機会が増えます。

これにより、自己肯定感が高まり、社会とのつながりを再認識することができます。

特に、孤立しがちな時期に社会との接点を持てることは、精神的な支えとなり、社会復帰への意欲を後押しします。

まとめ

画像はイメージです

動物や農業に関わるA型就労支援事業所は、自然のリズムと調和しながら無理なく働ける場所です。「さんさん牧場」や「多機能型施設コッコ」は、それぞれの地域で利用者の個性や体調に寄り添い、安心して続けられる支援を提供しています。

小さな成功体験の積み重ねが、社会復帰や自立生活の大きな力となるのです。もし「働くこと」に不安や悩みを抱えているなら、動物や農業とふれあう支援の場を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

ここでの経験は、あなたの新しい一歩を支える強い味方となるでしょう。

あとがき

私は動物が好きで学校でも動物のことを学んでいました。そんな私が今回、就労継続支援A型事業所で動物の世話や鶏の飼育といった仕事内容があることを知り、大変驚きました。

私は、高校時代に畜産を専攻しており、当時は卵の集卵や洗卵といった作業にも携わっていました。今回のA型就労支援の仕事内容を知り、当時の懐かしい記憶がよみがえり、とても感慨深い気持ちになりました。

就労継続支援A型事業所は、障害のある方が雇用契約を結び、一定の支援を受けながら働くことができる場所です。動物の世話や畜産は、責任感を育み、日々の成長を間近で感じられるやりがいのある仕事だと感じます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました